日向の海には、神様がいるといいます | 阿蘇の国のクララ

 

8月16日(火)...

 

日向に着いたころには、

すっかりあたりは

夕闇に沈んでいました。

 

日向市

 

「これ、食べたら、帰る...?」

 

パパがそう言い出しました。

 

小丸新茶屋

 

ママは驚いたように目を丸くして、

それからにこりと笑いました。

 

「カメ探したいの?」

 

「うん」

 

※アカウミガメは、

1年で平均100個前後の卵を、

3回から4回に分けて産みます。

1シーズン中に、

2~3週間の間隔で

たびたび同じ砂浜を訪れ、

産卵を繰り返します。

宮崎県の産卵シーズンは、

5月中旬から。
8月中旬頃に繁殖シーズンを終えます。

 

それからパパは、

いつもの砂浜に下りて、

一晩中波打ち際を歩いて

アカウミガメをさがしました。


小倉ヶ浜

 

翌朝5時半...

 

「日の出だ!」

 

「...ママー!?」

 

「クーちゃん、どうしたの?」

 

「5時に、21匹が砂の上に出て来て、

もう海に向かったんだって...、見たかったな」

 

「会長、まだ残ってるかもしれないから

掘ってみようよ!」

 

「そうね」

 

「いたよー!」

 

「9匹残ってたー!」

 

「大きくなって、また会おうね!」

 

生まれたばかりのウミガメたちは、

興奮状態にあって、

2~3日間休むことなく

沖に向けて泳ぎ続けます。

 

沿岸域にいると、

カモメや大型の魚に食べられます。

 

ウミガメの死亡率はこの時が

最も高くなっていて

沖に逃げることができれば

クラゲなどを食べて大きくなります。

 

「アカウミガメを守る後継者がいないの...。

あなたたちが守りなさい」

 

8月18日(木)...

 

阿蘇山上へ。

 

南郷谷

 

「クー!」

 

「...アカウミガメを守るには、

ここからじゃ遠すぎるよ」

 

目の前には、

夜の色をまとい始めた草原がありました。

 

日向の海には、神様がいるといいます。

 

それなら、どうか...

 

ススキ


子ガメを無事に帰してください。