対等でありたい | 阿蘇の国のクララ

 

私たちは、

たった二人の人間なので、

仲良く暮らして、

たくさんのシカを捕りクマを捕り、

何不自由なく暮らしていました。

 

シカを捕ってもクマを捕っても

その肉だけを食べ、

それらの頭をどうすることなく、

そのまま捨てていました。

 

そのようなある日のこと...

 

「今夜はここで泊まることにしようか」

と言いながら山の方を見ていると、

岩山の急な斜面を

一人の女が下りてきています。

 

あのような急斜面を歩けるのは、

人間ではないかもしれない

と思いながら見ていると、

女は私たちのそばへやって来ました。

 

近くで見ると本当に美しい娘で、

その娘は私たちに、

「二人の若者よ、わたしと一緒に来なさい」

と言うのです。

(アイヌと神々の物語より)

 

宮崎県高千穂町

 

その日私たちは、

親父山でニホンカモシカを探すことにしました。

 

親父山

 

平成30年度~令和元年度の生態調査において、

宮崎県の推定生息頭数は143頭となっています。

 

 

「...鳥の巣?」

 

カモシカを見かけたときの対応...

近寄らず、通り道を確保してあげる。

犬にほえられると興奮するので、

犬を近づけない。

 

「私はほえないからいいでしょう?」

 

竜ケ岩の滝遊歩道

 

「ダメよ!近づいちゃ」

 

「クー...」

 

...しかし、

私たち二人はためらいました。

 

なぜなら、

あのような急な山を

人間の足ではとても登れないと思ったからです。

 

でも娘が

無理に誘ってくれたので一緒に歩き、

急な登りにさしかかってからは、

私たちは娘の両方の手へ

ぶら下がるような格好で歩きました。

 

そうすると、

私たちはなんの苦もなく登れて、

あっという間に山の上へ着きました。

 

「カモシカさ~ん♪どこ~?」

 

「ほえちゃダメって言ったでしょう」

 

「クー...」

 

山の上へ着いてみると、

山の反対側は緩やかな斜面で、

その斜面は美しいカヤ原でした。

 

カヤ原の向こう端の方に

かなり大きい家、

それも金造りの家が見えています。

 

娘はその家の方へ向かって歩き、

私たちは間もなく家の前に着きました。

 

竜ケ岩の滝

 

家の中から老人らしい声がかかって、

「用事があって来てもらったので、

早く家の中へ入ってきなさい」

と呼びかけられました。

 

家へ入ってみると、

かなり年老いた夫婦が座っていて、

先ほどの娘は、

この家の一人娘のように見えます。

 

炉端(ろばた)へ座った私たちへ

老人が言いました。

 

「今日ここへ

お前たち二人を呼んだ理由は、

お前たちはシカを捕ってもクマを捕っても、

それらの頭を神として祭りもしないで

捨てていた。

シカやクマは、獲物のうちでも

特別大切な神なのに、

それを粗末にしていたことは許せない。

罰を与えようと思って

お前たちを呼んだがどうする」

 

慌てた私たちは、

泣きながらお願いをしました。

 

「これからは、

シカやクマを神として大切に扱い、

その頭を神の国へ送りますので

どうぞお許しください」

 

全国で捕獲された

イノシシやシカの中で、

流通するのは、

およそ一割だそうです。

 

その多くは廃棄されています。

 

この動物がいたからこそ、

今現在の私たちも

生き延びてこられたはずなのに...。

 

「...ママ、キツネの巣穴があるよ!」

 

「コン♪」