DJ HAZIME / AIN'T NO STOPPIN' THE DJ | 5000VOLTもの電撃を受けるとシビれます

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自分がビリビリと刺激的電撃を受けたCDやレコードなどの音を中心に、レビューっぽい感じで綴っていきます。よろしくです。



DJ HAZIMEの2004年発売の1stアルバム「AIN'T NO STOPPIN' THE DJ」。先日紹介したDJ TAIKIの流れから、DJ主体のアルバムレビューを続けてみようと思ったのだが、そうなるとハーレム土曜日の「No Doubt」繋がりからも、これが一番適切な盤かと。

ハーレムという大箱で毎週600人近い人間を踊らせるDJ HAZIMEのアルバムという事で、フロア栄えする曲が大半を占めているかと思ったが、余りクラブユースを意識はしていないようだ。トライトンも多用してはいるがサンプリングメインの曲の方が多く、「トレンドで消費される曲よりも、ホームリスニングで長く残るモノを作りたかった」のような発言を本人も雑誌か何かでしていた気がする。

やはりDJ主体のアルバムは面白い。普通のRAPアルバムよりもコンセプトが大きく掲げられるからだ。そもそもDJはDJであって、プロデューサー/トラックメーカーでなくても良い訳だし、やはりアルバムを出すのであれば動機づけも必要なのだろう。DJ HAZIMEもこのアルバムまでにもトラックメイクはちょこちょこやっていたが、自身名義のリリースとなるとMIX TAPE、CDばかりだった。

1曲目「INTRO」から、2曲目「ON THE WHEELZ OF STEEL (WHAT'S MY NAME?)」は、10代からの付き合いであり、盟友であるニトロ全員をフィーチャー。しかしここでのニトロは、NIKE箱の2ndの頃のニトロであり、余り良いマジックは生まれなかった。残念!3曲目「RETURN OF THE CHANNEL 5」はニトロ以前に、参加MCのDABO、SUIKEN、K-BOMBらでやっていたCHANNEL 5のリユニオン。5っていうくらいだから、当時はあと一人居たんだろうな。しかしこれも2曲目に続きマジックは生まれない。K-BOMBがかなり好きな俺でも、これは残念と言わざるを得ない。

5曲目「金隠し砕き掴む黄金」は、餓鬼レンジャーが参加した1曲。これはアルバムの中でも少ない、トライトン全開の曲で、俺は苦手。餓鬼レンも普段からこういうトラックが多いんだから、敢えてHAZIMEの曲でもこういうノリをやる必要はなかったのでは?と思ってしまう。6曲目「いのちのねだん」は哀愁漂う美メロトラックに、「不安な世界情勢に置いての人命」という重いテーマをRHYMESTERがぶつける良曲。セルフボースティングやサッカーMCモノは誰にでも出来るが、やはりテーマが明確な曲は、MCのリリックとライムのセンスが問われるところ。そういった点ではMUMMY-D、宇多丸の2人はなんなくそのハードルをクリアー出来るMCだと言えよう。MUMMY-Dのヴァースの「感じたいのに感じないオレもオマエも不感症で、世界の平和への祈りは3時のワイドショー見て完了で」や、「命は等しくプライスレス、なのに誰かがそいつに位つける」辺りのラインはツボ。宇多丸も気になるラインを出すのだが、こういうテーマの曲になると、ここぞとばかりに政府批判をし始める悪い癖が出てしまい少し萎える。左寄り過ぎるんだよな~。

8曲目「WE GOT NEXXX」も今風サウンドで、ANARCHY、EQUAL、RYUZOというサグいMCが集合する。すみません、こういうのも得意じゃないです。RYUZOはマグマ初期(リリースはなしで、GOSSYの地熱とかで聴けた時代)の頃のスタイルは好きだったけど、いつの間にこんなワルになったのだろう。良い声してるしRAPも上手いんだけどな。9曲目「生まれつき (渋谷が住所 Pt.2)」は、渋谷繋がりでK DUB SHINEが参加。この頃のケーダブって、D.Lとのビーフでボロボロになってたイメージがあるけど、頑張ってます。

11曲目「マジッスか !?(ANOTHER SURE SHOT 外伝)」は、DELI、KASHI DA HANDSOME、般若が参加したナンパもの。地方営業の時とかリアルにこんな感じなんだろうな(笑) これトラックとRAPの相性も良いし、完成度の高いストーリーテーリングです。般若のヴァースの「山脈のふもと我 遭遇、ここが未知の入り口いざ勝負、…って帰んのマリちゃん?何でやねん、DJ HAZIMEのファンで、じぇねぇ!」のラインや、最後にHAZIMEの部屋から出てきた女性が自分らの前を通る時に「目ぇ合わせろよこの女」と捨てゼリフを吐くとこも般若らしくて最高。13曲目「THE SUN RISING」は、ミニマルなトラックの上でLUNCH TIME SPEAXがマイクを振るう。バッキンザデイもので、RHYMESTERの曲やナンパ曲に比べるとテーマが普遍的過ぎて弱いかな。

14曲目「7 DAYZ」は、6曲目に通じる美メロトラック。一緒に海外にスニーカーとかを買い付けに行ったMUROが参加で、内容も買い付け先での1週間みたいな感じ。レゲエシンガーのPUSHIMの歌も華を添えて、けして悪い曲ではないが平均点といった感じ。16曲目「DON'T BE GONE」もサンプリングメインのネタ感が強いトラックで、非常に耳心地が良い。しかしそんな美しいトラックも、シャカゾンビが、というかBIG-Oが思いっきりブチ壊す。もう、どんな曲でもリリックが一緒なんだよねこの人は。テーマもないし伝えたい事もないならRAPしなきゃ良いのに。「最初に一言 言っとくぜ、俺が放つ言葉は特選」って…。どこがですか全く。元々、HAZIMEはシャカゾンビのライブDJとしてシーンで名を売っていった感もあるので、リーダーアルバムに呼ばない訳にはいかないのも解るけどさ、ヒデボウイのソロとかでも良かったんじゃん?

全17曲。
DJアルバムによくある、別クルーのMC同士を引き合わせる意外なコラボ曲などは皆無で、普段からハーレムで酒を飲みかわす人間と、その周辺で固めたアルバムとなった。しかしアルバム中、何回も聴いたのはRHYMESTERの曲とナンパの曲のわずか2曲しかなかったのも悲しいけれど事実。ニトロが勢いを失っている時期に出たというのも凶と出たか。

マイク3本、いや、3000VOLT。

※ちなみに、このアルバムは2枚組で、Disc 2はHAZIMEのOLD SCHOOL MIX CD。トレチャラス・スリーとか、UTFOとか、CHUBB ROCKとかが入ってるんだけど、HAZIMEがOLD SCHOOLをプレイするのって、凄く意外な気がした。