今日も名鉄電車。
ドアが開く度に生温い風が吹き込んで、冷房で寒すぎる車内の空気が少しゆるむ。


目の前の女子高生が、バイトでのどうでもいい話をさも面白そうに話している。

クラスの中ではきっと中堅。という感じで、一人は地方のレポーターみたいな華がないのに目立ちたがるタイプだと思う。
もう一人は一発屋のガールズバンド、ベース担当。みたいな顔だ。

若い子たちはどんな会話をしているのだろうとあたしはiPodの電源を落とした。イヤホンはつけたままで音楽を聞いているふりをしてカモフラージュした。


二人の女子高生はお互いの話を聞いてない。
関連した話をしてそうだけどしてない。会話とはコミュニケーションのはずだが、結局自分の話にすりかえるという女子特有の会話だ。

キャッキャッとうれしそうにはしゃぐ若い女を澱んだ眼でうらやましげにあたしは眺めていた。


どうやら学校のかっこいい男子の話をしている。

「●●くんって顔不細工だけどサッカー超うまくてかっこいい」

「スポーツできる人ってかっこよくみえるよねー」
「ねー」

三十路前のあたしは、「いくらスポーツできてもプロじゃなきゃご飯たべれないからねぇ」と薄汚れた大人の意見を心の中で唱えた。



そんな彼女たちの男選びの基準を神経を研ぎ澄まして聞いている男がいた。


彼女たちの隣りに座っているギャル男だ。

先の尖がったハーフブーツにブラックデニムをインし、ピチピチのTシャツにベスト、腰にはチェックのシャツ。髪の毛は毎日大変だろうなというエアリーな髪型。胸元にはゴツめのシルバーアクセサリー。

岐阜の田舎でキメキメの彼が残念なのは彼が太っていた事だ。いや、太っているのが悪いんじゃない。
ギャル男なのにふとっちょ。というのがあたしの中でナンセンスな事なのだ。ピチピチのTシャツのイラストが丸みを帯びた腹のラインで伸びきって何が書いてあるのか読めない。

女子高生たちの隣りを一個空けて座っていたふとっちょギャル男は今までしていたイヤホンを静かに外し、彼女たちを一重瞼の細い目で横目でチラリちらりと気持ち悪く見ていた。心なしか体が女子高生の方へ傾いて耳をそばだてて会話を聞いている。

きもいきもいきもい。
きもいきもいきもい。
もういっちょきもいきもいきもい。




ここにきて、あたしは気付いてしまった。



音楽の鳴っていないイヤホンをつけて盗み聞きをカモフラージュして、目の前に座った女子高生とギャル男をサングラスの奥の目で観察しながら、日記を書いているあたしも十二分にキモいのだということを。








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なないろサーカス ~ over the Rainbow! ~

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