一度見たことがあるのだが久し振りに見たくなり、連休に絶対に見ようと休みを待ち望んでいた。前回見たのは20年くらい前。外国人の友達に「えー!日本人のくせに黒澤明を見てないの?セブンサミュライを今すぐに見ろ!」と言われて見たのだった。とにかく長い映画だったという感想と、たしかに面白かった感想があるのだが詳細は忘れてしまった。

 AmazonPrimeVideoでレンタルすると再生時間はなんと3時間20分。知っていたけど、展開が早く、短い時間に見どころが詰まっていて、最近の映画ではとうてい敵わない見応えにあふれている。

 

 

 野武士に狙われた村に麦の刈り入れ時期が迫っていた。自分たちの暮らしを守るために、村人たちは侍を雇い、村を守ってもらうことを思い立つーー


 本作は麦の刈り入れが始まる前までの1時間40分、間に休憩を挟んで麦の刈り入れから野武士と戦うまでの2部構成であるが、もう少し細かく分けると仲間集め、戦の準備、戦、の3部作だ。

 まずは冒頭の野武士達のシーン。白い空に騎馬姿の野武士達のシルエットが黒く映り、スピード感があり迫力が充分。まだ何もしていないのに(作中では)、野武士達の恐ろしさが瞬時に伝わってくる。


 単純明快なストーリーに武士と農民、武士と馬喰、馬喰と農民、といった身分制度の軋轢や同情の物語が編み込まれている。

 とくに武士と平民の身分の違いは作中に流れるテーマでもある。菊千代は天正2年生まれ、齢13歳とからかわれていることから、時代は戦国時代末期、本能寺の変の数年後、羽柴秀吉が天下を取ろうという時期に当たる。

 本能寺の変では穴山梅雪が、すぐ後の山崎の合戦では負けた明智光秀が、落ち延びている最中に農民の落ち武者狩りで命を落とした。本作では落ち武者狩りに参加していたことを隠していた農民達と、それを知った侍達との間に軋轢が生まれるが、身分の間に緊張感を生む、絶妙なエピソードだと感じた。

 そこに恋愛、というか、明日もしれぬ命と知った若者達の出会いや、親子、夫婦の愛情、武士の矜持、七人の個性といった要素も加わり一大エンターテイメントを構成している。



 とくに世界のミフネの演技は尋常ではなく、もはや人間技ではない。「菊千代」のコミカルな演技には笑わせてもらったが、憧れの侍の仲間になれてハイテンションな姿、農民たちを自分に映して右往左往する姿は菊千代の素直さ、素朴さ、元は農民出であることを見事に表現していた。

 世界のミフネはもちろんなのだが、わたしは馬喰たちにも感動してしまった。けたたましく騒ぎ、口が悪く、農民たちには無駄だから早く首を括って死ねと言う。しかし農民達への協力を渋る侍に意見する姿は、馬喰達の微妙な立場からうまれる感情を見事に表現していたのではないだろうか。


 このように脚本も演技も素晴らしく、まるで本当にあったことを記録した映画なのではないかと思うくらいリアリティに溢れているのだが、それだけに 少し、最後の戦のシーンが、ワンパターンのシーンが多くて飽きを感じてしまった。相手が40人だから、ある程度減るまでは「作業」になってしまうのは仕方がないのだが、、うーん。村の中に仕掛けがあるなど、もう一つパターンが欲しかった。

 それから、少々簡単に人が死にすぎるところも気になった。リアルすぎるのも難しいだろうが、脇あたりをブスッと刺すとすぐに人が死ぬっていうのはちょっと、、。雨の戦闘シーンなど迫真のリアリティを感じるだけに、斬られてすぐに死ぬところと、野武士が残り少なくなっても愚直に攻めてくるあたりは強烈に違和感として残ってしまった。


 しかしまぁ、本作は友人の言う通り、日本人は必ず見ておかねばならない、世界に誇るとんでもない作品であることは間違いない。