今から4年ほど前、前の治療院に勤めていた頃、
年配の常連紳士のXさんという方がよく

「僕はね、昔、すごく腰が痛かったときに六本木のSさんに腰を治してもらったんだよ。


そこは全然揉まなくて、手を背骨の上にほんの何分か乗せるだけなんだ。

僕にもできそうなくらいだよ…」とおっしゃっていました。


それがとても気になっていたので、

今度、XさんがいらしたらSさんの治療院の場所を教えてもらって、

行ってみようと思っていました。しかし、そういうときに限って、

Xさんの来院に間が開いてしまって、なかなか聞くことができませんでした。


やむを得ず、自分で六本木にあるSと名のつく治療院を

片っ端から調べて行くことにしました。2箇所まで絞り込むことができたので、

両方に行ってみることにしました。片方は違うなと分かり、もう一つに行ったところ、

そこがXさんの言うSという治療院だと分かりました。


看板もホームページもないワンルームマンションの一室の治療院でした。

穏やかそうな年配の院長先生と若い助手の方2人で4台くらいのベッドを回していました。

常に患者は途切れることなく、高額の料金を支払い、

次回の予約を取って帰って行きます。


一度目は見学で伺ったのですが、

やはり自分で治療を受けてみないと分からないと思い、

その後4回ほど通院してみました。しかし、全然良さが分からないのです。


まぁ自分に激痛部分がないせいだったのかもしれないし、

分かる感性がなかったのかもしれないし、

治療の相性があまり良くなかったのかもしれません。


3回目に治療に伺った時に、S先生に「うちで働きながら修行をしないか?」

とお誘いを受けました。


悩みました。

手を乗せるだけの治療で高額の料金を払っていく患者さんが

毎週予約を取って帰っていく。当時の私にはとても魅力的でした。

ただ自分が受けて、良さが全然分からないというのが問題点。

全然気持ち良くない、特に良くなっている感じもしないというのも問題点。

施術のやり方が全然面白くなさそうなのも問題点。


でもまぁ、私が分からなくても、そういうのは治療師側の観点であって、

治療される側には関係ないのか?とも思い…。


悩んだ末、大先輩の治療師の先生に相談をしました。


「そのXさんは今もそのSという治療院に通っているのか?」


「今はそのS治療院に通っていなくて、君んとこの治療院に通ってくるのはなぜだと思う?」


結局、S治療院のお誘いはお断りしました。


あのとき、S治療院で修行をしていたら、

今頃、ガッポリ…とも思わないでもないですが…。


私がやりたいことはS先生のやり方とは違うのでガッポリではない今日この頃です。


クレア自由が丘治療院
平田 恵弓