前章まで、議員秘書というポジションが持つ「特権」と、それに群がる「カネと権力」のドロドロとした裏側を解説してきた。
これほどまでに美味しい「プラチナチケット」であるならば、秘書の席は常に満席で、空き枠など出ないはずだと思うかもしれない。
しかし、現実は全く異なる。ハローワークや求人サイト、あるいは議員会館の掲示板には、常に「秘書募集」の案内が貼り出されている。そこには、永田町という特殊なムラ社会が抱える、残酷な「ブラック労働市場」のリアルが隠されている。
① 悪評は秒で広がる。パワハラ議員の末路
議員会館は、全国から集まった数百人の議員と数千人の秘書がひしめき合う、巨大にして閉鎖的な「村」である。秘書同士は食堂や喫煙所、超党派の勉強会などで独自の強いネットワークを形成しており、そこでの情報伝達スピードは恐ろしく速い。
* 「あの先生は、機嫌が悪いと灰皿を投げる」
* 「深夜2時に意味のない長文LINEが連発される」
* 「休日に地元のドブ板営業を無休で強要される」
こうした「パワハラ・モラハラ議員」の悪評は、瞬時にブラックリストとして共有される。
一度でも「あそこはブラック事務所だ」というレッテルを貼られれば、有能な秘書は絶対に寄り付かなくなる。結果として、事情を知らない未経験の若者や、他所の事務所でトラブルを起こして行き場を失った「訳あり」の人材ばかりが集まるようになり、すぐに辞めてはまた募集をかける……という負のスパイラルに陥るのだ。常に求人を出し続けている事務所は、このパターンに陥っている可能性が極めて高い。
② 「落選=即日無職」の恐怖と究極の不安定雇用
秘書という職業をブラックたらしめている最大の要因は、その圧倒的な雇用の不安定さにある。
国会議員の秘書は、いわば「究極の非正規雇用」だ。どんなに政策立案能力が高く、どんなに地元との調整に長けたスーパー秘書であったとしても、仕えているボス(議員)がスキャンダルや政党の逆風などで選挙に落ちれば、その瞬間にバッジを取り上げられ「即日無職」となる。
数年ごとの解散総選挙のたびに、自分の人生と家族の生活をチップにしてルーレットを回すようなプレッシャーに耐えきれず、民間企業や地方議員へと転身していく優秀な人材は後を絶たない。これが、業界全体が慢性的な人手不足に陥る構造的な理由である。
③ 選挙後の「狂乱の椅子取りゲーム」と逆転現象の萌芽
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