彼女の精勤ぶりは続きます。 

この当時の洗濯は大変な重労働だったそうでして。 

 

給排水インフラのないこの当時、

庶民は川の水を汲んできては 家の竈門で煮沸しなければならず、 

また脂類から作られる石鹸も大変高価かつ貴重な物だった。 

 

ゆえに家の中で洗濯できる環境を持つというのは、 かなりの富裕層だったそうです。

 

厨房仕事も大変で、専属の料理人のお手伝い。

 

 朝食、昼食、午後ティー、正餐、夕食後。

 

鍋や釜や皿を洗って磨いて明日の朝に備えると。 

他のメイド達と手分けするにしても、休む暇が皆目ありません。

 

(続)

 

 

日中の雑役で疲れ切った彼女は、

床に入る度に不思議な夢を繰り返し見るようになりました。

毎夜悪夢でうなされ始めます。

 

我が名はハーディシア。 

またの名は飢渇。 

またの名は疫癘(えきれい)。 

またの名は戦争。 

 

(※)疫癘=疫病の意

 

白き者を漆黒に沈めよ! 

白き旗を純黒に染めあげよ! 

我に歯向かいし者を、必ずや打ち滅ぼさん! 

 

冥府魔導を駆けたる我が蒼ざめたる馬の前に導け! 

ここに跪け!我が馬蹄で魂まで押しひしいでくれん!

 

【ヨハネ黙示録第6章第8節】 

見よ、蒼ざめたる馬あり、 

これに乘る者の名を死という 陰府(地獄)、

これに付き隨(したが)ふ

 

毎夜、夢に現れる人物は何者なのでしょうか?(続)

 

 

 

彼女には無論そのような機会などありません。

 

 

古来欧州では赤毛は「悪魔の印」や「魔女」の象徴と見なされ蔑視や偏見は根強く、

「ジンジャー(生姜頭)」などと呼ばれ、公然と差別が成されたのです。(続)