TACの民法講師については、これまで散々悪く言って来ましたが、浅井先生を除けば結構分かりやすい授業をしてくれるし、使い方を間違わなければ凄く有用だと思います。ただし、指導方針は絶対おかしいと思います。

 

山口先生の基本講義を借りて聞かせてもらったのですが、第一回目にこんなことを言ってました。

「民法の答案に書くこと。それは論点です。論点を抽出して論点について書けるようにするのが勉強であって、それ以外の勉強はただの遊びです。」

思わず眩暈がしました。

 

①論点は手段であり、目的ではない

民法の問題は、条文を適用して事案を解決するものです。その過程で満たすかどうか微妙な要件が出てきたら解釈論を展開する必要があります。それが「論点」です。「論点」について書くのはあくまでも事案解決の手段でしかありません。それ自体が目的となってはいけません。

「結論に影響を与えないにも関わらず、自分が知っている所論点について広く浅く書き連ねる答案については    厳しい姿勢で採点に臨んでいる。」

司法試験の採点実感に書かれた文章です。論点について書くことが目的となってしまってはいけない、という警告です。

http://www.ls.keio.ac.jp/%E6%97%A2%E4%BF%AE%EF%BC%88%E6%B3%95%E5%BE%8B%E7%A7%91%E7%9B%AE%EF%BC%89%E5%87%BA%E9%A1%8C%E8%B6%A3%E6%97%A8%E3%80%90%E6%B0%91%E6%B3%952017.10.10%E8%A8%82%E6%AD%A3%E3%80%91.pdf

「本問の事実関係を前提にする限りは問題が生じる余地のない論点について,長々と議 論している答案が多数見られた。かりに書かれている内容自体には誤りがなくても, 「本問の事実関係においては,何が問われているのか」を理解していないと判断され た場合には,むしろ減点の対象となり得た(書かれている内容自体に誤りがあれば,減点対 象となるのは当然である)。」

余計な論点について書いてもいいことはありません。

 

②論点があるとは限らない

「でも、民法の問題には必ず論点があるのだから、それを探せというのはまちがってないんじゃないの?」

と、思う方もいるかもしれません。それは、大きな誤解です。

最近の問題は、条文の要件に当てはめるだけの問題が増えてます。

 

例えば、今年の大問1の(1)は、536条2項の要件に当てはめればいいだけの問題でした。

この問題には解釈論の論点などありません。

それなのに、TAC生はありもしない論点を探して迷走している人が多かったです。

私の知り合いの人も「あの問題については、債務不履行責任や不法行為責任について書いた。」と言っていました。危険負担についてはノータッチだったようです。つまり、あの設問の点数はほぼ飛んでるということです。

 

なぜこんなことが起きたかというと、Y先生によって「論点を探さなきゃダメだ。」」という思考を刷り込まれていたからです。だから、問題を見てありもしない論点を探しに行ってしまったのです。本来は一番得点源になるところなのに。

 

TACの先生は、条文が大切とは全く言いません。そのため、条文ノーチェック、引用無しで問題を解く人も多いです。あくまでも条文の要件こそが出発点なのに。そのせいでどれ程点数が飛んでいるか分かりません。

 

何も知識が無い人が民法の問題を解いたら、恐らく条文の要件だけを見てその充足を検討するでしょう。そういう人の方が、TACの指導を受けた人よりもいい点がとれそうです。

 

Y先生の講義は、「論点を理解するためのもの」として割り切って使うのは有効ですが、答案の書き方指導はかえって害になりますので無視した方がいいです。

 

というか、「一回の講義につき五時間復習の時間をとれ。」といいますが、一教養科目に何故そこまで時間を割かなければならないのでしょう?専業じゃなきゃ無理です。

 

③これからもあの指導だとまずい。

 

実はこれからも従来通りの指導を続けると非常にまずいことになります。

 

あと三年以内に改正民法が施行されます。

施行されると、今までの判例法理の多くが条文化されます。

その結果として今までの論点の多くは消滅することになります。

 

ということは、民法はほぼ条文の要件に当てはめるだけの試験になっていく可能性が高いです。

なので、「論点、論点」というTAC式の指導を真に受けると酷い結果になる可能性が高いです。ありもしない論点を探して、点数崩壊なんていうことになりかねません。