帰れない山 | Un bel giorno di tredici

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~ある素敵な13日~

イタリアに関することを中心に、
楽しいこと好きなことを書いていきます。

『帰れない山』

(Le Otto Montagne)

 

監督・脚本:

フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン

シャルロッテ・ファンデルメールシュ

原作:

パオロ・コニェッティ

 

北イタリアにある

モンテ・ローザ山麓・アオスタ渓谷を舞台に、

都会育ちのピエトロと山育ちのブルーノの

友情と人生が物語られる。

 

 

都会に住んでいるピエトロは、

夏になると、父親がアオスタの小さな村に購入した

山の別荘で過ごすことになっていた。

 

ピエトロは山の別荘で過ごすうちに、

村で唯一の子供であり、

同い年のブルーノと友達になる。

2人は毎日、

アオスタの山々を駆け回り、

大きな湖で自由に泳いで自然を満喫する。

 

そんな子供時代には大冒険だった

父親との登山。

しかし思春期になると、

父との関係も煩わしくなり、

とうとう山の別荘で過ごさなくなっていったピエトロ。

ブルーノとも疎遠になる。

 

父親に反発し、夢を追いかけたものの、

結局、夢叶わずパートタイムのような仕事で、

その日暮らしの生き方をする現実。

そこにはブルーノと自由に山を駆け回った

活発で、やんちゃなピエトロの姿は無い。

 

父の突然の死の後、

アオスタの別荘を訪れたピエトロ。

そこでブルーノと再会し、

再び2人の人生が関わりあう。

 

 

※ここからネタバレあります。

 

「Le Otto Montagne

(ㇾ・オット・モンタンニェ)」という小説が原作。

直訳すると「八つの山」。

私は映画を観た後に小説を読んだよ。

 

小説を読むと両親の人生や、

ピエトロの葛藤、ブルーノの人柄を

深く理解することが出来る。

 

映画ではイタリアの山々の美しさや、

少年たちのやんちゃさ、

山の人達の粗野だけど優しい人柄が

本当に良く表現されていた。

私の大好きなイタリアの自然、

私の大好きなイタリア人を思い出して、

懐かしさで顔が緩むシーンが多かったねぇ。

 

ピエトロがネパールで

「八つの山を巡る者と、

 須弥山の頂上を極めた者、

 どちらがより多くを学ぶか」

という話を聞くシーンがある。

小説・映画のタイトルになっていることからも、

大きな意味を持つ話だよね。

 

ピエトロは、

自分は八つの山を巡る者、

ブルーノは須弥山の頂上を極める者だと

思っていた。

 

「須弥山=人生の中央にある一番高い山」

と解釈していたみたいだね。

ピエトロの考え方だと、

「須弥山」は人生の根幹となるような

経験、家族、想い、故郷とかになるのかな。

「人生にはときに帰れない山がある」

とも綴られている。

 

邦題は「帰れない山」。

本当、翻訳家の人って、凄いよね。

作者はイタリア人だからか、

やっぱり須弥山についての捉え方が、

日本人とは違うの。

 

無意識に仏教感がある日本人だと、

「須弥山」という言葉から、

真理とか信仰というものを

意識してしまう。

でも、この物語の中だと須弥山は

「山」と「人生」を重ね合わせる

シンプルな意味で使われているの。

 

そういう日本人の無意識を踏まえて

「帰れない山」ってタイトルにした

翻訳家の方のセンスが素晴らしい。

 

最後は少し悲しい終わり方だけど、

人生も自然と同じように、

思い通りにならず、雄大で、

悲しい程に美しいと感じられる映画だった。

 

映画『帰れない山』オフィシャルサイト (cetera.co.jp)