『旅するローマ教皇』
(In viaggio)
監督:ジャンフランコ・ロージ
現ローマ教皇・フランチェスコは
2013年に教皇になってから
昨年2022年までの9年間で53ヶ国を訪れた。
膨大な記録映像(アーカイブ)を元に、
ジャンフランコ・ロージ監督が
ローマ教皇の旅を通して世界の現状を映し出す。
全部良かったんだけど、
まず良かった点は、
ローマ教皇賛歌の映画ではなかったこと。
監督の意図の通り、
ローマ教皇の旅を通して世界の現状を
視覚的にとらえることが出来た。
最初のシーンは難民の緊迫した救難信号(SOS)から始まる。
では難民はどうして難民になったのか。
希望の船は、どうして死の船にならなければいけなかったのか。
根底にある戦争、富の独占、暴力による支配、
貧困、虐待、そしてまた戦争。
世界中で大歓喜の中、歓迎されるローマ教皇。
歴史的な惨劇による悲しみも、
家族単位の身近な悲しみも、
一人一人の人間にとっては大きな悲しみに違いない。
それを受け止める教皇の真摯な態度に跪きたくなる。
時にはローマ教皇ですら言葉の選択を誤り、
人を傷つけ謝罪をすることもある。
カトリック教会の過去の過ちに対し、
(または、現在も続いている可能性も大きいが)
世界中で謝罪をする教皇。
富める国や人と
貧困から抜け出せない国や人を
同じ世界の中で目の当たりにする理不尽さ。
ローマ教皇とは、なんと重い責務なんだろう。
「夢を見ることを恐れてはいけない」
「自由を奪われても尊厳は奪えない」
光のある言葉を伝え続けるローマ教皇。
それでも、教皇の赴くこの世界は
戦争につぐ戦争だ。
戦争は貧困しか生まないと、
歴史と経験で知っているのに、
今日も人類は戦争を止めず人を殺している。
最後、ローマ教皇が祈るシーンは
胸が締め付けられて涙が出たよ。
こんなに行動してくれているのに、
世界は平和を受け入れない。
身命を賭して平和を祈り行動する人を目の当たりにして、
私たちには何が出来るだろう。
世界中の人が戦争を止めて欲しいと思っている。
正攻法で「戦争反対」と声を上げても、
何も変わらない世界で、何が出来るのかを
考えさせられる映画だ。
そして、それでも
「私たちは戦争を憎み、平和を望む」
と声高に言い続ける必要があると、
改めて決意させられる映画だった。
