旅行前にシラクーサについてネットで調べていたら、
『走れメロス』の舞台がシラクーサだと書いてあった。
学生の時に『走れメロス』を読んだけど、
私の記憶だとギリシャっぽいイメージだったなぁ。
走った=マラソン=オリンピック=ギリシャ
という勝手な脳内変換で、記憶違いが起こったんだろう。
王様が暴君で、理不尽な罪でメロスが捕らえられた気がする。
でも、メロスは妹の結婚式に出なくてはいけないから
メロスの親友が身代わりになってくれるんだよね。
王様に言われた期間内に命がけで走って戻ってきて、
その姿に感動した王様がメロスも親友も許してくれる。
はい!
これが私のうろ覚えの『走れメロス』。
読み返してみてビックリしたよ。
全然違う!!
シラクーサに関しては冒頭で
「野を越え山を越え、
十里はなれた此のシラクサの市にやって来た。」
と書いてあるだけだから印象にないんだね。
・・・メロス、そもそもシラクーサ市民じゃないじゃん!
別の村で羊飼いやってたんだって。
妹の結婚式の買い物でシラクーサに来て、
市民から王様の暴君ぶりを聞いて怒るんですねぇ。
でも、よくよく読んでみると、
王様は市民を虐殺したのではなく、
自分の身内、派手な暮らしの臣下を殺している。
権力闘争の色が強くない?
市民の被害少なくない?
太宰自身も
「メロスは単純な男であった」と書いているけど、
単純と言うか・・・バカだよね。
だって意味の分からない怒りに任せて、
短剣持ったまま王城に入っていってるんだよ?
「この短剣で何をするつもりであったか。言え!」
と言われて
「市を暴君の手から救うのだ。」
だって。
ただの狂人ですよ。
市民でもないし、短剣持って王城に入って行ったら、
どう考えても捕らえられるだろ?
暴君ディオニソスの方が正常な対応してるだろ?
他にもツッコミどころが多すぎて、
ここでは書ききれないから、みなさん読んでみてください。
しかも、村に帰る時は一睡もせず走ってるけど、
シラクーサに帰る時は、
まだ時間があるからって一眠りしてるの!
しかも寝過ごしてるの!
しかもしかも!
その後、呑気に小歌を歌いながら、だらだら歩いてるの。
シラクーサ到着がギリギリになって最後はダッシュするんだけど、
何もかも自分で蒔いた種で友達や家族に迷惑かけてるのに
自分の事を「勇者」とか言ってるし。
シラクーサに着いた時は、
なぜか「ほとんど全裸」と書いてある。
もはや変態。
・・・なんだろう?メロス、嫌い。
学生にこれを読ませて何を読み取れと?
友達は選べとか?
読み終わった後、あまりにも困惑してしまった。
私だけが理解できないだけで、
素晴らしい作品なんだろうと思って、
ネットでみんなの感想を探してみた。
意外とみんな私と同じ感想で安心したわぁ。
寺山修司も『歩け、メロス』とい文学論で
『走れメロス』の矛盾点を指摘してる。
『走れメロス』について調べているうちに
「走れメロスは走ってなかった!?
中学生が『走れメロスの全力』を検証」
「中学生指摘の『走れメロス』の矛盾」
なんて記事が多くヒットした。
これは一般財団法人・理数教育研究所の
2013年「算数・数学の自由研究」で最優秀賞に輝いた
中学2年生の村田君が書いた
「メロスの全力を検証」というレポートのことだった。
当時も話題になったみたい。
レポートの内容を簡単にまとめると
『メロスは村までの10里=約39キロの道のりを行くのに
10時間かかり、
平均時速は推定約3.9キロということになる。
村田君は一般男性のフルマラソンの平均タイムが4時間30分で、
平均時速が約9キロであることを引き合いに出し、
《一般男性の歩行速度は4キロなので
メロスは往路は歩いたことがわかります》と結論づけた。』
とのこと。
一般財団法人・理数教育研究
村田君「メロスの全力を検証」
http://www.rimse.or.jp/research/past/winner1st.html
村田君、天才じゃない?!
このレポート読んでテンション上がったよね!
1940年に書れた『走れメロス』を、その73年後に
冷静な視点で中学生が数学的に分析してるの。
レポートを読むと、日没時間までちゃんと計算してるの。
シラクーサについて調べてたら
思いがけず素晴らしい物に出会えたよ。
ゴッド・ファーザーロケ地巡りのガイドさんとも
その話をしたんだけど、
ガイドさん曰く、あの王城は
今のドゥオーモ広場あたりだと推測されるんだって。
王様の名前がディオニソスだから、
考古学公園の方を想定してるのかと思ってた。
ガイドさんも「走れメロス」の
河が氾濫するシーンを読んで考えたけど、
シラクーサ周辺で氾濫するような河はないんだとか。
「そもそもヨーロッパ人(しかもイタリアのシチリア)だから
日本人の『走る』って感覚と違うのかもしれないですねぇ。
最後にダッシュしたから、
もう走ってるって言って良いと思ってるんだと思う(笑)。」
とも言ってたね(笑)。
確かに、シチリア島の羊飼いだから
寝過ごしたり歌いながら歩いたりしそう。
日本人の感覚だからメロス最悪って思うけど、
メロスはシチリア(イタリア)人なんだもんね(笑)
太宰治はイタリア人の気質を良く知ってたのかも?
大人になってから『走れメロス』を読み返すと
学生の時にぼんやり読まされてたのとは
違う感想を持てるし、村田君のレポートも合わせて読むと
すごく面白いので、興味のある方は是非、読んでみてください!
