かなり昔の話ですが..優香主演のドラマを見ました。
大好きだった愛犬が死んでしまい、悲嘆にくれる短大生を
好演。クリスマスが舞台なので季節違いなのですが
雪のふる中、ファンタジーがくりひろげられます。


..私の大好きだった彼が死んでしまった。

彼の名はデューク。幼い頃から一緒に育った私の愛犬。
どんな時もいっしょだった。

道に迷って不安な時、「彼」は私に優しくキスを
してくれた。だいじょうぶだよ って。

そんな大好きだったデュークは、昨日老衰で
亡くなってしまった。私はもう悲しくて大学へも
アルバイトへも行く気はなかった。

..人前もはばからず、バスの中でも泣いていると
目の前に座っている、私と同じくらいの男の子が
「どうぞ..」
って笑顔で席を譲ってくれた。

ろくに、お礼も言わず..それからあてもなく街へでると
なぜかその男の子は後ろからついてくる。
「なに?」
と悲しみもあって、不機嫌にふりきろうとした。

でも、なんだかおっちゃこちょいで、屈託のない笑顔に
徐々に私もそのペースにまきこまれてしまった。

一緒にスケートしたり、寄席にいったり だんだんと
明るくなる自分に気づいた。
そういえば、デュークも犬のくせに落語をテレビで
見てたなぁ..。

..「じゃぁ 今日はありがとう 楽しかった。」
最後までぶっきらぼうにふるまってしまった。
男の子はさみしそうに、いってしまった。

..男の子の優しさにデュークの姿をたぶらせて
たたずんでいると、ふいに顔の横からキスをされた。

 あの男の子だ。

「..言い忘れたけど 僕も楽しかった。」

「ずっと ずっと 楽しかったよ..。」

え?

ずっと? って..・

男の子の姿はまたどこかへ、行ってしまった。


「きっと..彼が会いにきてくれたんだ..」

..雪がふりだした。かじかむような寒さのはずなのに
あたたかい涙で満たされるように、私を
優しくつつんでいた。



江國香織の短編。以前センター試験に出題されたそうです。
試験会場では号泣する受験生が多発したそうです。

いつも一緒で、自分を守ってくれていた愛犬が
男の子のすがたで「ありがとう」を告げにくる..
素敵なファンタジーですね。試験会場で泣いている子供達
の姿を思い浮かべると、なんだかとても可愛いいですね。