昨日から本格的に仕事が始まりました。大学教授などというと好きな研究をし、学生に多少、講義をしていればいいように思われていますが、そんなことはありません。雑務も結構、多いんですよ。

さて、今年の最初のお仕事は、再来週末、17日、18日に全国一斉に行われる大学センター試験の監督業務のために、東大駒場キャンパスで開かれた監督者説明会への出席。私は、今年は二日間とも東大駒場試験場で試験監督の業務に当たる予定なんです。

東大駒場


かつての共通一次試験、今は、大学センター試験、受験された経験をおもちの方も多いのではと思いますが、受験生も凄く緊張するのですが、監督に当たる先生方や職員は、それ以上に、もう本当に神経をすり減らしてしまうくらい緊張します。まず、全国共通の試験ですからいかなるミスも許されません。しかも、会場ごとに対応が違ったりしてはいけないということで、監督者自身の勝手な判断は、認められず、すべて『監督要領』というマニュアル通りに進めねばなりません。ところがこのマニュアル、実に、230ページ以上もあって、熟読して試験監督に当たって下さいと言われても、すべての内容を暗記しているなんて到底無理。
 

何もトラブルが発生しなくても大変なのですが、もし監督中に何か特別な事態が起こると、それはもう大変。想定される様々なケースに対する対応は、一応、指示されているのですが、想定外のことが起こるからこそ問題なんです。試験中にトイレに行きたくなった学生がいたら、気分が悪くなって吐いてしまった学生がいたら、咳が酷くてまわりの学生の迷惑になっていたら、緊急地震速報が出たら、・・・。

センター試験


数年前、携帯電話を使ってのカンニング事件があり、今では、携帯電話は、試験前に一端、机の上に出させ、電源を切らせて鞄の中にしまわせることになっていますが、いちいちすべての受験生の荷物検査をするわけにはいきません。試験中に携帯電話が鳴ったら、見付けてその携帯電話が入っている荷物ごと試験室の外に持ち出さねばなりませんが、どこで鳴っているか見付けるのも大変です。

マークシート


試験監督業務の一番大切な点は、カンニングを未然に防ぐ、させないことですが、故意にカンニングしようとする学生の場合は、ともかく、過って不正行為と見なされることをしてしまった学生への対応は、とても神経質な問題でよくトラブルのもとになります。センター試験においては、定規やコンパス、計時機能以外の機能を持った時計などの使用は、一切認められていません。そういったものは、試験には必要ないので、前もってしまわせるように指示しているのですが、試験中に受験生が無意識にせよ、使ってしまった場合、その受験生は、不正行為をしたと見なされ、すべての試験結果が無効になってしまいます。これは、意図的ではなかっただけに受験生本人にとって大ショックで、間違えれば、帰宅途中に電車に飛び込んで自殺してしまいそうなくらいになってしまいます。到底、一人で帰宅させることは出来ないので保護者に迎えに来てもらうのですが、保護者は、本人の一生がかかっている試験なのに、なぜ監督者が未然に止めてくれなかったのかと激怒して食ってかかり、説得に何時間も要したこともあるそうです。

試験後に大学センターには受験生から様々な苦情が寄せられます。「監督者の巡視の足音がうるさくて試験に集中出来なかった」、「監督者が試験監督中にいびきをかいて寝ていた」、「監督者が口頭ではなく、板書のみで伝達すべきことがらを口に出して言ってしまった」・・・。このような苦情や対応のミスは、すべて翌朝の新聞に取り上げられてしまいます。

したがって、監督に当たる二日間は、早朝から夕方遅く、受験生の答案の枚数チェックが終わり、校内から搬出されるまで緊張しっぱなし、ずっと立ち続けで過ごさねばなりません。多分、今年も18日の夕方、監督業務から開放された時、私は、疲労困憊してしまっているものと思います。

写真は、すべてイメージです。