最近、じっくり映画を見ていない。
そんなときなら普段絶対見ないような
映画を見ようという気になる。


先週でしたが久々の試写会。

今回は「わが母の記」。
劇場でも、テレビでも
絶対選択しないジャンルだ。

井上靖の小説が原作。
監督は「クライマーズ・ハイ」の
原田眞人。


幼いころ一時離れ離れになった
記憶がわだかまりとなって
両親と距離をおいて生活していた
小説家の伊上洪作。

年老いてだんだんと自分を
忘れていく母・八重と洪作、
伊上家の交流を描く。



以下、ネタばれ。









海外出品しているので
英題が”My Mother's chronicle”。
その割に時間の流れが
スーパーで「○○年」という表示と
役所広司の髪の色だけ。


季節の描写を入れるとか

何かないとごく短期間の

出来事のようだ。

実はもう一つ原因がある。

それは末娘役の宮崎あおい。
中学生から大学生まで演じて
違和感がないというのは
ある意味すごいのだが、
異次元すぎて
歳をとらない魔女のよう。
「ぶーぶーにーちゃん」と
いきなりつき合っちゃうし。


主演の役所広司は

好きな俳優だ。
かつて大河ドラマ「徳川家康」で
演じた織田信長は強烈だった。
その後も役柄にとらわれず
社交ダンスからダイワマンまで
そつなくこなす。

今回はそれが裏目に出た。


見た目がいい人すぎて
娘に強く当たる
「傍若無人な頑固親父」や
過去の記憶から母親を
受け入れようとしない
「親不孝者」に見えない。
伊上洪作とはこういうやつだと
脳内補完しないと後半の
心の変化がぼやけてしまう。

それが証拠に

クライマックスの
電話のシーンはぐっときた。
やはり「いい人」目線だと
こんなにぴったりなキャスト。


洪作の母・八重を演じたのは
樹木希林。認知症を患い、
自分の息子のことも他人のように
接する。それでも過去の記憶を
頼りに「あるもの」を探し続ける。
会場から笑いが起こるほどの
コミカルな演技。


そう、伊上家に悲壮感はない。
40歳の遅咲きデビューだった
洪作は今や売れっ子。
大きな屋敷と使用人、
伊豆に別荘もある。
運転手を雇うために
車を買うような裕福な家だ。
八重が暴れたり、徘徊しても
家族だけでなく
従業員や秘書までもが
八重の面倒を見る。

口では「大変だったんだよ」と
洪作の妻や娘たちは言うが
まったく大変そうじゃない。
自分にはボケた母親を
おもちゃにしている風にしか
見えなかった。


悲壮である必要はないが
年老いた親の面倒を見るのは
口で言えるほど単純なものでは
ないだろう。


映画というものは
脚本という骨格に
監督が肉付けし
俳優が動かす「人」の
ようなものだと言える。

たとえ動きが素晴らしくても
それに見合う体格をしていなければ
魅力が目減りしてしまう。
そんな作品だった。


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今日は真面目に書きました。
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