―山名地区―

山名稲荷塚古墳は、主体部に舟形石棺を持ち、頭推太刀や金環が出土しているという。墳形は円墳と記載されているが、主体部や出土遺物からみて前方後円墳であった可能性が高い古墳です。

「綜覧」では稲荷森1018番地に所在したことになっているが、地元の方の話によれば、現在の番地で稲荷森1038番地の稲荷神社が建つ高台がこれに相当する。5世紀後半代の首長墓である可能性が高い古墳です。（綜覧　多野郡八幡村59号墳）　

稲荷塚古墳の上にある稲荷大明神は、山名上中組が共同で尊信している社です。この場所は昔、伊勢塚古墳と並ぶ前方後円墳であったといいます。先人の言い伝えによれば、明治末か大正期に、大雨のあと古墳の脇から赤い水が流れ出しているのを発見、何事かと其の近くを掘ったら石室が出現、その石室に丹（に）が多量にあり、その丹が雨に溶けて丹泥となって流れ出したとのことです。石室発見で大騒ぎとなり村中で発掘した。人伝えでは宝物が多く出たが、一晩現地に置いておいたらその晩のうちに無くなってしまったとか。盗掘されていなければ、古墳の規模からしてかなりの宝物が有っても不思議ではないが、真偽のほどは不明です。発掘の時、石棺が出土して暫く稲荷社の脇に置いてあったが、藤岡の酒屋さんの別荘に嫁ぎ、戦後の昭和30年頃、其の別荘に保存されている石棺を見た人がいるそうです。

舟形石棺は、群馬県内16基の古墳から18例が確認されている。出土古墳は、おおむね5世紀後半から6世紀初頭の全長100ｍクラスの前方後円墳をはじめとした、小地域の最上位の古墳で、その分布はいわゆる西毛地域に偏差する傾向にある。このことからこの時期、群馬県西部を中心に、舟形石棺という同一の埋葬形態を採用することを結合の象徴とする政治的な地域圏が形成されていたとの見解が提起されています。

「稲荷大明神」

山名町では、３町内会がそれぞれ稲荷大明神を祀っています。このうち上中組町内会では、毎年初午には住民が稲荷山古墳に祀られている社（やしろ）に集まり盛大に初午祭を行っています。

地域の先人の言い伝えでは、其の元は、山名町中ほどの宝積寺（ほうしゃくじ）境内に建立されていたのを、いつの頃か現在地に移社されたと言われています。

また、上中組町内会の稲荷神社は、寛政12(1800)年８月末日に、紀州紀伊郡(京都府（山城国）にあった郡)の稲荷大明神本宮より新設許可状を受けて祀っています。

稲荷大明神本宮許可状

参考図書：「みなみやはたの歩み」第4集・「新編　高崎市史　資料編Ⅰ」

山名稲荷塚古墳(歴歩27)