チョコレート


あの時もう少しだけ強く抱きしめられたら 僕だって泣いたかな
そっと離れていった手のひらに なにを置き忘れてしまったのだろう

 

悲しい物語を聞くたびに 誰にも心を開けなくなったから
今はもう手が届く本棚の絵本の時間は止まったまま

 

なにも知らなかった みんな自分じゃない他の誰かを強く想ったんだね
僕だけひとりぼっちに見られないように ずっとね ひとりになりたかった

 

早く冷たい心になるように 僕は冷蔵庫の前で
それは引き出しの中のチョコレート 僕の気持ちを暖める

 

お姫様は老婆に眠らされ 憶えているのはそこまでで朝が来る
夢から覚めた今も結末に出会うこともなく夜になるよ

 

たぶん気付いていた 僕は君のように人を信じるなんて出来ないんだね
誰かがこんな僕の手を掴むことが ずっとね 怖くて逃げたかった

 

僕も誰かに愛されたいくせに 誰も味方に見えなくて
それは銀紙破ったチョコレート 僕の気持ちを包み込む

 

今日は何かが壊れたはずなのに 思い浮かべる人もない
それは小さく砕いたチョコレート 僕の気持ちを染めていく

 

ある日ひとりで生まれて来たように 今夜ひとりで死ぬために
それはあの頃と同じチョコレート 僕の気持ちに溶けてゆく

 

他のなによりも優しく・・・
 

           Lupin


あなたは今どこで何をしているのかしら 
優雅なdinner それとも恋のまほろば

 

行き交う人 すれ違う人の残り香に
今夜もまた心臓が止まりかけるの

 

あなたはこの潤んだ瞳を突き止めて
月の雫さながらその手を伸べるから
二人の手が解かれてしまったその頃に 大事なものひとつ消えていた

 

胸の奥のダイヤを盗んで 愛しさだけを残したLupin
ママからはぐれた少女の頃みたい あなたは今どこにいるの?

 

この私のハートを濡らして 罪なワインに酔わせたLupin
銀幕を降りて夢から醒めるほど あなたは霞んでいくのに

 

奪われたものを取り返すために
見えない影 探す旅が始まる

 

僅かな記憶が心を突き刺す 
腕時計の針が静かに動く

 

あなたは今何色の石を追っているの?
真っ赤なルビー それとも青いサファイア

 

その背中が誰かの姿に重なって
夜の街はすぐに隠してしまうの

 

微かにまだ覚えているのよ その香り
ジタン製のカポラルなんてね 洒落てるわ
そう女は男の匂いに敏感なの 憶えていて損はないことよ

 

それは夜の風にさらわれて 手がかりひとつ残したLupin
宝石よりも煌めくこの瞳が いつかはあなたを捕らえるわ

 

この私のハートを脱がして あなたの色に染めたのLupin
ママの目を盗んで塗った口紅の ときめきにどこか似ているわ

 

胸の奥のダイヤを掠めて 愛しさだけを残したLupin
奪われたものはあなたにあげるから その心を頂戴するわ

 

嗅ぎ付けられたら そこでお終いの
二人だけの熱いゲームが始まる

 

僅かな記憶に突き動かされる 
この衝動 ただあなたが愛しい