経営再建中のPHS最大手ウィルコムは18日、会社更生法の適用を東京地裁に申請した。負債総額は2060億円で、通信事業者の破綻としては過去最大。企業再生支援機構に経営再建の支援を求めるとともに、ソフトバンクと投資ファンドのアドバンテッジパートナーズから出資を含む支援を受け、再建を目指す。約430万人が利用するサービスは継続する。
25日にも裁判所の下で再建手続きが始動する見通し。高速データ通信用設備投資の資金難に端を発したウィルコムの経営再建がようやく具体化することになる。
久保田幸雄社長は同日の記者会見で「取引先や顧客に迷惑をかけたことをお詫びします」と謝罪する一方、「携帯電話とは全く違うマーケットを開拓できる」として経営再建に自信を示した。
基本的な再建の枠組みについては関係者の合意を得ており、カーライルなど株主に対し100%減資するほか、金融機関は融資など約1300億円のうち約1000億円を債権放棄する。また、高速データ通信事業を分割し、新会社にソフトバンクが出資する。アドバンテッジはウィルコム本体と新社双方に出資する方向だ。支援機構は出資はせず、120億円のつなぎ融資枠を設定するにとどめる。
ウィルコムは1994年に「DDIポケット」として誕生。95年からPHSの事業を開始した。電磁波が携帯電話に比べて微弱なため、医療現場では500施設、6万人に利用されているほか、国内初の定額通話など新サービスで契約数を伸ばした。しかし、携帯電話との競争で顧客離れが進み、現在の契約数は約430万人にとどまっている。
巻き返しの切り札が、現行のPHSの最大20倍の高速データ通信サービスが可能な「XGP」だった。ところが、昨年10月に全国展開する計画が資金難で頓挫。私的整理のひとつであるADR手続きで金融機関と調整したが、実現に至らず、更生法を申請する結果となった。
久保田幸雄社長は、「(計画していた)上場ができれていれば、全く違った状況になっていた」と無念さをにじませた。
今後は、PHSの公共性を武器に、新たな加入者を増やしていきたい考えだ。
PHSは日本発の技術。しかし、携帯電話の急速な普及に押され、NTTドコモがすでに撤退しており、今回ウィルコムが経営破綻に至った。今後も再建までの道のりは険しそうだ。