深刻な不況下にもかかわらず、ペット市場は依然堅調だ。この市場はペットフード、ペット用品、その他関連サービスなどの分野から構成される。ここ数年全体的に伸びているが、2007年度のペットフード市場が前年度比1.5%増の2783億円にとどまったのに対し、周辺産業、なかでもペット用品市場は前年度比4.8%増の1540億円と、とりわけ伸び率が高かった(メーカー出荷金額ベース)。
双方の市場を見てみるとペットに対する飼い主の変化がうかがえる。
まずペットフード市場であるが、伸び率はほかの分野より低い。原因には、小型ペットの人気により、大型犬から小型犬へのシフトが進んでいることや、高齢化や室内飼育による運動量の減少により、食が細くなっていることも影響し、1匹あたりの給餌量が減少していることが挙げられる。それでも市場が堅調に伸びているのは、肥満対策や年齢別の商品、素材や味にこだわったものなど、高付加価値ペットフードの比率が高まったことで、単価アップにより売り上げがカバーできている点が大きい。かつての“エサ”というよりも、人間の“食事”に近い印象である。
一方のペット用品市場だが、こちらは室内飼育の増加に伴ってトイレシートや猫砂といった消費財が牽引している。ペット用衣服など景気悪化に伴い鈍化が見込まれる分野もあるが、全体的には、ペットへの支出よりも飼い主自らの支出削減が優先される傾向が見受けられる。
こうした背景には、かつてのペットがパートナーとして、家族の一員という位置づけになってきていることがある。総人口は頭打ちで長期的には市場の拡大は楽観視できないが、中期的には高齢化やさらなる核家族化を受け、旺盛なペット需要は継続していくと考えている。