マスクメーカーの業績好調が目立つ。新型インフルエンザの感染拡大を背景に春先以降、企業や官公庁の備蓄や個人の購入が急増し、2009年9月中間連結決算は、小林製薬が過去最高の利益を記録するなど、各社の業績を押し上げた。事業規模が小さく、経営へのインパクトが小さいとされてきたマスク事業が、経営の重要な柱になりつつある。
小林製薬の中間決算は、売上高が4.9%増の637億円、営業利益が17.0%増の98億円、経常利益が17.0%増の94億円、最終利益が7.9%増の53億円だった。営業、経常、最終の各利益は中間期で過去最高になった。
マスクの販売拡大が好業績をもたらした。前期のマスク事業の売上高は20億円だったが、今期は上期だけで17億円を突破。新商品3種類を加え、10商品に増やしたことも追い風になった。通期は前期の2倍近い37億円の売り上げを見込む。
マスク最大手のユニ・チャームも、「マスク特需」の恩恵を受けた。中間期の売上高は、前年同期比1.5%増の1725億円、営業利益が40.5%増の214億円のほか、経常、最終利益も過去最高になった。
主力の紙おむつがアジア中心に売れたことが大きいが、マスクの販売拡大も寄与した。マスク事業の上期の売上高は35億円で、全体の売上高に占める割合がわずかだが、事業規模は前年上期に比べ、7倍に拡大した。
下期は上期より5億円多い40億円を見込むが、同社は「固めの数字」としており、業績が上ブレする可能性もある。
マスクメーカーでは、川本産業も売上高が前年同期比16.1%増の165億円、営業利益が5.5倍の4億8400万円で、ともに過去最高を達成した。同社は「マスクや消毒剤などのインフルエンザ対策関連商品の販売が増加したため」としている。
マスクの需要は、インフルエンザや風邪の予防ニーズが高まる10~1月に最も多くなり、1~3月には花粉対策の需要も加わる。そのため下期は上期を上回る販売が予想される。
マスク関連メーカー57社が参加する全国マスク工業会が9日発表した上期(4~9月期)の生産量(産業用含む)は、前年同期比3.7倍の17億枚と大きく伸長した。10~12月期も前年同期の3倍程度になるとみている。
春先から続いてきた店頭での品薄状態は緩和されつつあるが、同工業会は「これからまた品薄になる可能性もある」として、マスク事業の好調が業績を押し上げる傾向はいっそう強まる見通しだ。