アントニオ猪木(66)が初主演する映画「ACACIA(アカシア)」が、東京国際映画祭(10月17~25日)のコンペティション部門に邦画では唯一、出品されることが6日、分かった。元プロレスラーと少年の交流を描く。芥川賞作家で監督・脚本を手がけた辻仁成氏(49)は「猪木さんに震えました。すごい俳優。見ていただければ分かります」と、映画祭でのワールドプレミア上映に自信を見せている。
最高賞「東京サクラグランプリ」を競うコンペ部門は映画祭の“顔”。今年は国内外の約750の候補作品があり、近日中に正式発表されるが、15作品が内定。猪木の初主演作は邦画では唯一、コンペ入りを果たした。
老人たちが暮らす団地で用心棒を務める元プロレスラー・大魔神が主人公。息子に十分な愛情を注げなかったことを悔いているが、孤独な少年と一緒に暮らすようになり、それぞれが心の傷を乗り越えていく。
猪木は72歳の設定。老けメークはせず“目力”を弱めることで役になりきったという。大きな体を折り曲げて少年の服を縫ったり、プロレス技を教えるシーンも。終盤では「ウオ~ッ」と号泣。心優しく、人一倍繊細な大魔神役を見事に演じている。コンペの選考理由は明らかにしない方針だが、猪木の好演が出品の決め手になったようだ。
辻監督も賛辞を惜しまない。「誰もが思い描かなかったキャスティングを目指した。さまざまな人に猪木さんの起用を不安がられ、笑われて悔しい思いもした。コンペに選ばれたとき、ひらめきが正しかったことを知った。猪木さんの存在感に感動してもらいたい」
辻監督は6作目のメガホン。1999年「千年旅人」はベネチア、2001年「ほとけ」はベルリンと国際映画祭を経験しているが、東京国際は初めて。「大変に光栄で、緊張します。一生懸命、撮影してきた作品なので、物おじせず、恥じることなく、映画祭を楽しみたい」と心待ちにしている。
猪木と辻監督は開幕イベントとプレミア上映(日時未定)での舞台あいさつ参加を調整中。「ACACIA」は配給会社が未定だが、この上映をきっかけに、おそらく争奪戦になるだろう。
◆東京国際映画祭 1985年に始まり今年で22回目。昨年就任の依田巽チェアマンがテーマにエコロジーを掲げ、じゅうたんは緑色。中心部門はコンペ、アジアの風、特別招待作品、日本映画・ある視点、ワールド・シネマと、昨年加わった「ナチュラル・ティフ」。今年のコンペ審査委員長はメキシコのアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督。六本木ヒルズの劇場を中心に開催される。