兵庫県西部の佐用町などに大きな被害をもたらした台風9号に伴う豪雨から16日で1週間。佐用町内では依然2人が行方不明で、捜索が続けられている。一方、復旧作業は急ピッチで進められているが、現在も約100人が避難所暮らしを余儀なくされ、多くの世帯で断水が続くなど、被災前の生活を取り戻すにはかなりの時間が必要。住民の経済的な打撃も大きく、生活再建に向けた対策も急務となっている。
■難航する捜索
県内ではこれまでに豪雨で、4~86歳の20人の死亡が確認された。佐用町内で亡くなった人は18人。このうち本郷地区では、町営住宅の住民が近くの小学校へ避難する途中、増水した川や側溝に流され、3世帯計8人が死亡した。現在も町内では2人の行方が分からなくなっており、県警や自衛隊、消防が400人態勢で捜索している。
ただ、流されたとされる場所から直線距離で約6キロ下流で発見された犠牲者もおり、県警などは捜索範囲を広げ、レスキュー犬や重機なども投入しているが、川岸などには大量の土砂が堆積(たいせき)しており、捜索は難航している。
行方が分からなくなっている佐用町本郷の小学4年、小林文太君(10)を知る近くの女子高生(16)は「お姉ちゃん(彩乃さん)は亡くなったけど、せめて文太君だけでも元気な姿で見つかってほしい」と祈るように話した。
■またも水の苦しみ
平福地区の避難所となっている「地域福祉センター」では15日、約1週間ぶりにデイサービスが再開された。14日夕に断水が解消され、風呂が使えるようになったためだ。再開初日は8人のお年寄りが訪れ、「久しぶりに湯船につかれてうれしい」と喜んだ。
しかし、町全体では、水道の復旧は遅れている。15日現在、全世帯の1割以上にあたる約900世帯で断水が続き、完全復旧は17日になる見通し。復旧した地域でも利用は生活用水に限られ、飲料用として認められるのは早くても来週半ば以降となる。
町役場には自衛隊や近隣市の給水車27台が待機し、給水を実施しているが、猛暑が続く中、水道の早期復旧を求める声は強く、住民らは「なぜこんなに水に苦しめられるのか」と不満を募らせている。
■生活への不安
豪雨で住居や店舗に被害を受けた住民には今後、経済的な負担が重くのしかかる。JR佐用駅前の佐用商店街では、約60店が浸水し、設備の損傷などを理由に閉店を決意した商店主もいる。
35年にわたってパン屋を営んできた女性(56)は「パン焼き機や冷蔵庫などが全部水につかった。今さら借金もできないし、店はたたむしかない。周囲の商店主とも『もう(営業再開は)無理ね』という話ばかりで、精も根も尽き果てた」と肩を落とした。
こうした事情を考慮し、町ではライフラインの復旧とともに経済的な支援を重視しており、被災者に見舞金を贈ることも検討中。13日からは改修のための支援策を練るため、町内の全家屋7500戸の実態調査も始めている。
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