住宅ローン減税の拡充に加え割安感も高まったことで、マンション市場に底を脱する気配が強まってきた。年明け以降、相場よりも2割程度安い“アウトレットマンション”が増え、販売業者も値引き戦略を強化していることで、モデルルームへの来場者数はこのところ増加基調にある。ただ、このまま上昇軌道に乗るかという点では懐疑的な見方が多い。新規供給には、中小デベロッパーを中心に慎重姿勢が崩れていない。
◆魅力で選ぶ動き
民間調査会社の不動産経済研究所が16日まとめた5月の首都圏のマンション発売戸数は前年同月比19.4%減の3538戸で、21カ月連続で減少した。5月18日の段階では2.5%増の4500戸前後と増加に転じると予想していたが、結果的にマイナスになったのは、不動産会社が在庫の圧縮を優先し、新規発売を抑制したためとみられる。
今年1月からの累計発売戸数も26.7%減の1万2818戸で、前年水準を大きく下回っているのが実態だ。
しかし、こうしたなかにも「マンション市場に明らかな変化が感じられる」(大手不動産会社)との声が多くなってきた。実際、大手デベロッパーの間には、攻勢に転じる動きも目立つ。
いち早く在庫処理にめどをつけた大京は、4~5月の発売戸数のうち、新規物件が7割を占めた。契約戸数も昨年同時期よりも3割増え、「価格優先ではなく物件の魅力で選ぶ消費者が動き出した」(広報部)とみている。
その一例が5月末に発売した「ザ・ライオンズたまプラーザ美しが丘」(横浜市青葉区)。同物件は、3.3平方メートルあたりの単価が約300万円と高額にもかかわらず、発売した28戸中26戸にすでに購入申し込みがあり、取引が低調に推移してきた業界にあっては異例の実績だ。
東急不動産も3月に発売した新規物件の初月の契約率が8割を超え、昨年同月の50%前後から大幅な改善をみせた。
特に東京都文京区の名園「六義園」の隣接地に建設中の「ブランズ六義園」は、発売3カ月で9割以上を売り切る好調ぶりだ。同社も昨年末に茨城県守谷市のマンションで2割程度値引きした新価格を設定するなど、価格重視の対応を余儀なくされてきた。それが環境配慮型など商品価値の高い物件を用意することで「物件の価値を正当に評価し購入を決める顧客を取り込めることが証明できた」(経営企画部)と自信を深める。
同社は今年に入って3件の新規物件を供給したが、下期にはその5倍の新規物件を供給する予定という。
◆用地取得なお慎重
ただ、これらの例にみられる活発な取引が中小業者を含め業界全体に広がっていくかといえば、話は別だ。事業者の多くはマンション用地の新規取得に慎重だ。東急不動産は、用地買収の際に精度の高い情報取得や用地選別を実現するため、4月から首都圏の用地買収担当をエリア別に配置する制度を設けた。
一部に明るさが見え始めたのは事実だが、慎重さも根強い。こうした混在状態から、徐々に“快方”に向かっていくものとみられる。