<特集>あだち充の世界(1) 「タッチ」「みゆき」…30年色あせない「青春の巨匠」 | フィトンチッド 花粉症 SEO アクセスアップ C.Iサポートセンター

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「みゆき」や「タッチ」、そして「クロスゲーム」……。30年以上にわたって青春ラブコメマンガの傑作を続々と生み出すあだち充さん。5月12日発売の月刊マンガ誌「ゲッサン(月刊少年サンデー)」(小学館)の創刊号で新作「QあんどA」が巻頭カラーを飾った。衰えを見せない「青春の巨匠」の魅力とは……。【河村成浩】

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 ◇累計2億冊を突破

 あだちさんは70年、「消えた爆音」(デラックス少年サンデー)でデビュー。78年に高校野球マンガ「ナイン」(少年サンデー増刊)で脚光を浴びた。80年、同じ下宿で暮らす高校生たちを描く「陽あたり良好!」(週刊少女コミック)と、血のつながらない妹と同級生の二人の「みゆき」に振り回される優柔不断な高校生が主人公の「みゆき」(少年ビッグコミック)の連載を開始。81年に「タッチ」が週刊少年サンデーでスタートした。空前のラブコメブームを巻き起こし、82年に「タッチ」と「みゆき」で第28回小学館漫画賞を受賞。その後も「スローステップ」や「ラフ」、「H2」などヒット作を生み続け、現在は週刊少年サンデーで「クロスゲーム」を連載中で、単行本累計2億冊突破という偉業を達成している。

 ◇“汗くさくない”青春

 あだちさんの作品は、スポーツと“汗くさくない”若者たちの恋と青春が等身大で描かれる。それまで少年マンガで人気だった「巨人の星」などの「スポーツ根性もの」と、少女マンガの主流となる「恋愛もの」が融合したような作風だ。

 「ナイン」は、甲子園出場を夢見る野球部の女子マネジャー百合の「笑顔を見るため」に、主人公の克也は野球部に入る。物語は、厳しい特訓もなく、野球のライバルも登場するが、むしろ百合との恋敵の関係が中心で、あくまでも二人の恋物語がメーンだ。克也たちが決勝に進出した最後の夏の大会では、チームメートの唐沢が夏休みに女子と海に行くために、監督が験担ぎで伸ばしたひげを夜中にこっそりそって、負けようとしさえする。スポ根マンガではあり得ない展開は、その後のあだち作品の原点とも言える。

 ◇ラブコメの金字塔「タッチ」

 そのスポーツラブコメ路線の金字塔とも言えるのが、「タッチ」だろう。のんきで優柔不断の上杉達也とまじめな双子の弟の和也、隣に住む幼なじみの浅倉南。子供部屋が隣接していて、「陽あたり良好!」の“一つ屋根の下”の恋の要素と、ヒロインの夢をかなえるために甲子園を目指すという「ナイン」で描かれた野球。さらに優柔不断で頼りない兄が主人公という「みゆき」の要素も加わっている。

 物語は、3人が微妙なバランスを保ちながら、淡々と進んでいたが、突然大きく転換する。和也が、地区大会の決勝に向かう途中に事故死してしまうのだ。南が球場から病院に駆けつけると、和也の遺体に付き添う達也が「ウソみたいだろ、死んでるんだぜ。それで…」とつぶやく。その死を乗り越えるため、達也は和也の遺志を継いで、南のために甲子園を目指し、南は達也を支えながら、新体操を始めて大活躍する。そして、甲子園に出場した達也が、南に愛を告白するという感動のラストを迎える。甲子園での熱戦は一切描かれず、達也に敗れた天才打者・新田の再戦の誘いにも「疲れるから」とあっさり断ってしまうという淡泊さ。あだちマンガのエッセンスが詰め込まれている。

 ◇長澤まさみで映画化も

 あだちさんの作品は、次々とアニメ、ドラマ、映画と映像化された。82年に「陽あたり良好!」がドラマ化。「みゆき」、「タッチ」がアニメ化された。2000年代に入っても「タッチ」「ラフ」が長澤まさみさん主演で映画化され、「H2」もドラマ化、09年には「クロスゲーム」もアニメ化され、人気は全く衰えない。あだちさんは、携帯電話や流行のファッションなどをほとんど登場させず、普遍的なデザインを心がけているという。「タッチ」が30年たっても色あせないのは、そんなこだわりがあるからだろう。

 ◇「喪失と再生」を丁寧に

 「クロスゲーム」では、主人公の喜多村光(コウ)が小学生のとき、大の仲良しだった「学校一可愛い」という月島若葉を事故で失うところで第1部が終わり、第2部から、若葉の「甲子園に行きたい」という夢を背負ったコウが豪速球投手に成長していく姿が描かれる。

 タッチと同じく「死」が描かれるが、連載時の担当で「ゲッサン」編集長代理の市原武法さんは「子ども時代に直面する死は、ものすごいショック。あだち先生は、そうした喪失感を丁寧に描き、さらに、現実はそこで終わらずに悲しみを乗り越えていく必要があるというところまできちんと描いているんです」と話す。

 最新作「QあんどA」は、6年ぶりに引っ越して戻ってきた弟の前に、6年前に死んで幽霊になった兄が登場する……という話だ。市原さんは「久々に描こうとした兄弟のきずなのストーリー。切なくて、笑える青春ものです」と話す。やはり「死」が描かれる。

 ◇

 あだちさんは「若い子たちには、世界的不況なんて関係ない。それよりも好きな子と手をつなげたことのほうが重要なんです」とコメントしている。自身を「昭和伝統芸 手描きまんが家 あだち充」とちゃかしながら、「死ぬまでマンガを描きたい」と語るあだちさん。あだちワールドは広がり続けるだろう。