政府は29日、女優の森光子(本名・村上美津)さん(89)に国民栄誉賞を贈ることを正式に決めた。表彰式は7月1日に首相官邸で行われる。
栄誉賞授与の理由について、河村官房長官は29日午後の記者会見で、「長年にわたり芸能の分野で常に第一線で多彩な活躍を繰り広げ、特に舞台俳優として『放浪記』において半世紀にわたり2000回を超える主演を務められるなど、国民に夢と希望と潤いを与えた」と説明した。同賞の受賞は森さんで17人目。現役俳優では初めて。
森さんはこの日、東京・日比谷の帝国劇場で「放浪記」公演の千秋楽を迎えた。受賞の知らせは、その休憩中、森喜朗・元首相から森さん本人に伝えられた。
終演後のカーテンコールで観客にも報告が行われ、祝福の花束を受けとった森さんは、「私だけ一番得をしたような申し訳ないような気がする。こんな幸せな思いをさせていただき、本当にうれしい」とあいさつ。「今日で、この役からさよならするとは思っておりません。もちろん、引退なんかいたしません。もっと表現力豊かな女優になって、みなさまに何回も何回もご覧いただきたい」と力強く宣言した。
その後の記者会見でも、「まだご覧になっていらっしゃらない方が多いと思う。みなさまから呼んでいただければ、(私が)健康でいられる薬になる」と、この日で2017回に達した「放浪記」の単独主演記録更新に意欲を見せた。