ビッグスリー(米自動車3大メーカー)の一角が初めて破綻(はたん)に追い込まれた。オバマ政権は破綻処理と伊大手フィアットとの資本提携の“2点セット”がクライスラー再建の近道と判断した。これにより、6月1日に抜本再建策の提出期限を迎えるゼネラル・モーターズ(GM)の破綻も一気に現実味を帯びてきた。
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≪「単独再建は無理」≫
「生き残り可能な自動車メーカーに生まれ変わることを期待している」
4月29日夜、就任100日の会見でオバマ米大統領はクライスラーについてこう語ったが、その処方箋(せん)に破綻処理も含まれていることを否定しなかった。
ミニバンを生み、「ジープ」など人気ブランドを保有するクライスラーは、ビッグスリーの中で最小とはいえ従業員数は約5万4000人にのぼる。その破綻は、20世紀初頭からの大衆車時代をリードしながら、最近は日本勢などの攻勢でシェアを減らしてきた米自動車産業にとって決定的な転換点となりそうだ。
ビッグスリー再建に取り組んできたオバマ政権は、車種がSUV(スポーツ用多目的車)など大型車に偏り、開発力も劣るクライスラーを「単独再建は無理」と見切りをつけていた。フィアットとの提携を実現させるため、破綻処理も「有効な選択肢」(高官)として念入りな準備を重ねてきた。
米財務省は債務削減について期限直前まで債権者と交渉を続けたが、一部債権者が最後まで抵抗し時間切れとなった。だが、結果的にはスピード再建を可能にするプレパッケージ(事前準備)型破産の条件が整う形となった。あらかじめ債権者から再建計画の同意を得てから、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)に基づく会社更生手続きに持ち込む手法だ。
≪ローマ帝国の野望≫
販売網のスリム化などフィアットにとってもメリットは大きい。マルキオンネ最高経営責任者(CEO)は、北米市場の生産・販売拠点を手中に収め、自動車産業の「ローマ帝国」を再興する野望を抱く。
全米自動車労働組合(UAW)は29日夜、クライスラーの退職者向け医療費負担軽減を承認。負の遺産一掃のメドをつけて破綻処理とフィアット提携に持ち込む-。「成功した解決策」と政府高官も満足する再建の青写真だが、成否の行方は定かでない。
今後の焦点はGM再建の行方に移る。GMは4月27日に発表した追加リストラ策で、約270億ドルの債務の株式化に加え、政府支援の返済や労組への医療費関連の支払いも半分以上を株式で行う案を提示。債権者が同意しなければ、破産法の適用を申請する考えだ。破綻の脅しをかけて債権者に譲歩を迫る戦略だが、果たして通用するか。
「米経済の象徴的存在」と米自動車産業の再建に力を入れてきたオバマ大統領は「ビッグスリーを破綻させた最初の大統領」として歴史に名を残すことになったが、再生の行方にはなお多くの困難が待ち受けている。