窃盗未遂容疑で拘留中だった那珂市杉、無職、柘植(つげ)直人容疑者(24)が取り調べ中に水戸署2階から逃走した事件。警察官を睡眠薬で眠らせて逃げたという前代未聞の逃走劇は、発生から7日目の容疑者逮捕でようやく幕を閉じた。【杣谷健太、原田啓之】
30日午前5時過ぎ、水戸市青柳町の住宅街。無職男性(68)は自宅2階で寝ていたところ、誰かが廊下を通る気配で目が覚めた。
窓の外を見ると、大勢の警察官が家の周りを囲んでいたという。1階に下り、家中を見回した後、再び2階に戻ると、収納扉が2センチほど開いているのに気付いた。
扉を開けると、柘植容疑者が押し入れのすき間に潜り込んでいた。目が合った男性は「ほわー」と声を上げた後、冷静さを取り戻し、柘植容疑者の右腕を取って「下に行こう」と呼びかけた。その瞬間、柘植容疑者は左手で窓を開けて屋根に上がり、屋根から木に飛び移った。
近くの車庫で取り押さえられた柘植容疑者は抵抗せず、ぼうぜんとした表情で連行されたという。
現場を見た男性は「警察にはもっとしっかりしてもらいたい」とこぼした。
逮捕後、午前8時から同署で会見した小堀健一署長らは冒頭、「県民のみなさまに不安を与えおわび申し上げる。逃走されるに至った経緯を調べ、真相解明に努める」と謝罪した。柘植容疑者が取調官の男性巡査長(30)に薬を飲ませたことを認める供述をしたと発表したが、薬の入手経路や逃走後の足取りなどは「捜査中」として明らかにしなかった。