なぜ、2人の幼い命を奪わなくてはならなかったのか--。秋田県藤里町で起きた連続児童殺害事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた畠山鈴香被告(36)に対する25日の控訴審判決は、再び無期懲役を言い渡した。畠山被告は1審とは証言内容を変えて「覚えていない」などとし、「心の闇」を照らし出す新事実は見いだせなかった。真相解明を求める遺族らの思いは複雑なままだ。
畠山被告は、黒いジャケットに白いブラウス姿で入廷した。青白い表情でじっと判決に聴き入った。
1審では、長女彩香ちゃん(当時9歳)を「橋の上で振り払った」と、殺害の状況を身ぶりを交えて証言。2軒隣の米山豪憲君(同7歳)については「彩香がいないのに、なぜ元気な豪憲君がいるのか」という切なさと憎しみから殺害したなどと述べた。
ところが、控訴審になると供述は後退する。彩香ちゃんについて「1審の最中から記憶にかすみがかかってくる感じになった」。豪憲君についても「記憶がビデオテープのようにぶつぶつと切れたような感じ」と「健忘」へと変化。竹花俊徳裁判長が「今まで言っていたこととは違うのか」「なぜ殺すのか理解できない」などと問いただす場面もあった。
一方、検察側は「記憶を失っているとは信じがたい」と主張。豪憲君の両親の強い処罰感情を力説し、死刑判決を強く求めていた。
◇反省感じられず…豪憲君の両親怒り
絞殺された豪憲君の父勝弘さん(42)と母真智子さん(42)は、控訴審も、すべての公判を傍聴した。判決も真智子さんが豪憲君の遺影を抱えて入廷し、竹花俊徳裁判長が控訴棄却を言い渡す瞬間は、うつむき加減で聴き入った。
両親は控訴審で、検察側の証人としてそれぞれ証言。勝弘さんは「都合の悪いことだけを忘れたと言い、反省の態度はみじんも感じられない」と怒りをあらわにし、動機などについて証言を後退させた畠山被告を厳しく批判した。証拠採用された調書でも「2人を殺して生きられるなら日本の司法はおかしい」と憤った。
真智子さんは「1審で『変わったことを見てもらいたい』と話していた被告の何が変わったのか」と疑問をぶつけた。【野原寛史】
◇被告の弟「申し訳ない」
畠山被告の弟(31)はこの日も、再就職のための職業訓練に励んでいた。
1審の公判は毎回傍聴したが、控訴審は一度も傍聴をしなかった。「(1審の)裁判で、なぜ事件が起きたのか明らかになると期待したのに、何も分からず失望した」と振り返る。
今月、秋田刑務所で畠山被告と面会したとき、「なぜこうなったのか分からない」と漏らす姉に思わず「それじゃ、誰も理解できない。お前がちゃんと言わなきゃ」と声を荒らげたという。
今は、自分の生活で精いっぱい。事件の影響もあって職を失い、地元で働くのは難しいと考えている。
控訴棄却を聞いて「死刑でも無期でも、そうですかとしか言いようがない。自分がやったわけではないが、米山さんに申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と話した。