遺体を棺に納める「納棺師」を描き、米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画「おくりびと」(滝田洋二郎監督)のヒットにより、葬儀のあり方への関心が高まっている。死に装束を扱う呉服業者では売り上げが倍増。葬祭関連コースを設置している専門学校への問い合わせが急増するなど、職業としても注目を集めている。「縁起でもない」と、とかくタブー視されてきた“死”。映画は、「おくる人」「おくられる人」それぞれが、あらためて考え直す契機となっているようだ。
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大阪市中央区の展示ホールで2月27日から3日間、行われた呉服展示会。一角に設けられた死に装束のコーナーには、大勢の客が詰めかけた。
「1カ月平均20着ほどだった注文が、今年に入って50着と倍以上になっている」と話すのは、出店した装束店「一文」(東京)の担当者。訪れた人が手に取るのは、華やかな胡蝶蘭や桜、虹などさまざまな柄があしらわれた色とりどりの装束。単価は5万~10万円を中心に、最近は30万円を超えるような物もよく売れるという。
購入の動機は「夫婦でおそろいを用意したい」(60代男女)など。担当者は「映画が、より自分らしい最期について考えるきっかけになったのではないか」と分析する。
一方、葬祭コーディネーターなどの養成コースをもつ日本ヒューマンセレモニー専門学校(神奈川県平塚市)では、昨年9月から今年1月末までの資料請求の件数が前年比で4割増加。看護師など社会人からの資料請求が多いのも今年の特徴で、別の葬祭関連の学校には「人の役に立つ立派な職業。ぜひ娘にやらせたい」という親からの問い合わせもあったという。
また、「きれいに送りたい」という遺族の関心を集めているのが、「エンバーミング」と呼ばれる技術だ。事故で損傷を受けたり、闘病のためやつれたりした遺体を元気なときの姿に近づけるもので、葬祭会社「公益社」(大阪市)では現在、約4割の人が利用。事故で負った大けがや苦しむ表情を和らげたいと、平成17年4月のJR福知山線脱線事故の犠牲者にも施された。
神戸赤十字病院心療内科の村上典子医師は「棺の中の最後の姿が忘れられないと話す遺族は多い。きれいな姿の故人とお別れができることは、死別の悲嘆からの回復にとっても重要になる」と話している。