インターネット専業証券が、外国為替証拠金取引(FX)のサービスを拡大している。金融危機による株価低迷で、本業の株式委託手数料の収入が激減し、収益源の多様化が急務となっているためだ。ネット証券各社は株取引の顧客基盤などを頼みに、FX専門業者との顧客獲得競争に挑む。
FXとは、一定の資金(証拠金)を担保に外貨を売買する取引。商品によっては、元本の数百倍の金額をやり取りできるものもある。
昨年以降の株価下落や為替相場の乱高下などを背景に、株取引経験者を中心にFX人気が上昇。5大ネット証券のうち楽天証券が昨年5月、SBI証券が同7月に手数料を無料化したことも、利用者の増加につながっている。
なかでも、SBI証券は同11月、取引単位を通常の1万通貨単位から1000通貨単位に小口化し、まったくのFX初心者でも始めやすいように工夫をこらしている。
「利用者にとってありがたい手数料引き下げ競争も、サービスを提供するネット証券にとっては体力勝負の側面がある。際限なくやっていくと、自らの首を絞めることになるだけに、各社はコスト面以外でも差別化を図っている」(ネット証券関係者)という。
FXの特徴であるハイリスク・ハイリターンの性質を生かすべく、楽天証券は同7月、証拠金額に対して取引できる倍率(レバレッジ)の上限を50倍から100倍に引き上げた。同時に必要証拠金額を引き下げ、より少ない手持ち資金でより多額の取引を可能にした。
【顧客獲得戦争も激化】
一方、最近では投機性の低い売買で着実に利益を上げたいという声も増えているといい、マネックス証券グループのFX専業会社、マネックスFXはレバレッジを1倍から設定し、外貨預金感覚での参加を促している。
楽天証券は2月2日、投資家に安全性をアピールするため、証拠金の信託保全による資産管理を開始した。マネックス、松井証券に続き、5大ネット証券のなかでは3社目の導入となる。
信託保全は、顧客から預かった資産を取引業者の資産と区別するため、業者が比較的安全性の高い金融機関の信託口座で管理、保全する仕組み。業者が破綻した場合でも預託資産は保障される。
このほか、カブドットコム証券は、損切りの額をあらかじめ決めておく独自の「逆指値」システムを採用。相場が予想以上に急変して損が出た場合に、自動的に反対売買を入れて損失拡大を食い止めることができる。
厳しい経済環境が続くなか、FX市場は拡大を続ける数少ない成長分野とされる。
SBI証券の今井秀明商品部長は、FXの収益全体に占める割合について「まだ1割に満たないが、今後2割、3割と伸ばしていきたい」と力を込める。
松井証券の松井道夫社長もFXについて「ブローキング(仲介)事業の一環として力を入れる」と意欲をみせている。
利用者の裾野が広がるなか、株式依存からの脱却に向けたネット証券各社の競争はますます激しさを増しそうだ。