経済産業省は、中小企業やベンチャー企業を対象に、国や独立行政法人が保有する特許を使用する際に支払うライセンス料を大幅に引き下げる方針を固めた。金融危機や景気後退の影響を受け中小やベンチャー企業を巡る環境は一段と厳しさを増しており、国有特許を有効活用し、新たなビジネスモデルの創出などを後押しするのが狙いだ。
現在、各省庁が保有する特許は約3000件で、独立行政法人は約3万件に上るとされる。だが、各省庁保有分のうち、実際に利用されているのは大企業を含めても06年末で約13%にとどまっている。未使用の特許としては、カーナビゲーションへの応用が可能な防衛省保有のレーダー技術、A型肝炎ワクチンの大量生産技術(厚生労働省)、触媒に用いるプラチナを化学変化させないようにすることで、燃料電池を長持ちさせる技術(経産省)などさまざまなものがある。
国などが保有する特許を民間企業が使用する場合、従来は、特許を活用した商品などの売上高の2~4%程度を国に対して支払う必要がある。今後は中小やベンチャーに限り、過去に実用例はあるものの一定期間利用されていない特許は、ライセンス料を従来の半額とする。また、これまで一度も実用化の例がない特許はほぼ無料とし、1円で開放することもあり得るという。
金融危機の影響で、中小企業やベンチャー企業の研究・開発投資などの資金調達が難しくなっており、特許の利用にかかる費用負担を和らげることで、新商品の開発や新事業の展開を促す。