コンサートの場所は、リーダーが公民館を借りる手配をしてくれていた。

やはり、コンサート会場の雰囲気はとても好き。

パイプ椅子を並べ、中央付近にPA(音のバランスを調整する)席を設けていた。
次々とみんな歌ってゆく。
女の子のデュオ。
甲斐バンドのカバーバンド。
オリジナル曲のバンド。
愛好会のリーダーの率いるバンド。
塩崎先輩のベビーカーと、
そして自分。

舞台奈落から、出番が来て登ってゆく時が好き。
生まれてきた時ってこんな感じ。
一生を過ごしているのが歌ってる時間。そして再び次のステージまで・・。

この日、のびのび歌えた気がした。


自分が歌ってない時は、前のパイプ椅子に両手を乗せ、その上にあごをのせて聞き入った。
甲斐バンドのカバーはキーボードの女の子の演奏がとても気にいった。

オリジナルバンドにギターのすごくうまい子がいた。
膝でリズムをとりながら演奏する。
指がスケールの上をすべり、早くて動きが見えない。
途中たまに、すごく幸せそうに笑う。
本当にギター好きで、音楽が脳にぴっちりつまっていそうな少年。

塩崎先輩の、ベビーカーでの演奏は初めて聞いた。
音色、コーラス。
ああ、なんて美しいんだろう。
まっすぐむかいあうように歌いかけてくる。

そういえば、学校でキャロルやってた時は、先輩は正面を向かずいつも横向きで、すこし前かがみでギターを見るように演奏していた。

塩崎先輩は部活の為になにかを我慢していたのかもしれない。

ひとは1面だけではわからない。

そして自分自身さえ――。