翌朝
奥さんが、せっかく東京に来たんだから見てゆきなさいよと言うので、ギターを預かってもらい遊びに出かけた。
渋谷から原宿に抜けてみた。
原宿は賑わっていた。
雑貨やさんに入ると、ピンク色の不思議なものがテスターとして置いてあった。
人差し指ですくって匂いをかいでみた。
くんくん。
いいにおい。

どうやら髪につけるモノらしい。
スタイリングジェルを買った。

竹下通りに入ると、クレープ屋さんがあった。
小学校の時、漫画で見たクレープ。
シンプルな味がオススメというので、蜂蜜シナモンで食べてみた。
ベンチで食べていると、
同じ年頃の女の子が2人、
「ふと~んぞ!」
と言って通り過ぎた。
通り魔発言だ。

弟に頼まれたドクターペッパーを3本自販機で買い、鞄に入れた。

しばらく歩いてから、又ライブハウスに戻った。
旦那さんと奥さんとMさんが送ってくれた。
Mさんは、
「ひとみ、お前華やかな世界を目指すな。」
と言った。
「はい。」

Mさんには肯定的な返事しかできない。
でも私には内心野心があった。

立川から電車に乗り継ぎ、中央線へ。
谷村新司のシンガーという私小説を読みながら、峠を越える。
長いトンネルを抜けると、民家の明かりが流れる。
自分が窓に映った。
その時、不思議な感覚があった。
説明しにくい感覚。
暗闇に自分の意識がぽっかり浮いている。
自覚したことのない自我というものを見たのだろうか。

この経験がいかに意味があったか、後に知る事となる。