★たまたま立ち寄って読んでくださった皆様、いつも反応を下さる方々本当にありがとうございます。大きくPRしていないブログですが、誰かの目に入ったというのは嬉しい限りです。

 

自分の博士課程生活に関して書き記す際、

「これに関しては後で」

といった形で明確に書き残さなかった部分について今日は書こうと思う。

 

所謂『ハラスメント』に関してだ。

 

学生、社会人に関わらず

「これってハラスメント?自分の被害妄想?」と悩んでいる人

あるいは、熱心に指導していたつもりがハラスメント事例として訴えられてしまった

こうした方々の考えるきっかけになれば幸いである。

 

今日のポイント:

①ハラスメントの定義

②私が遭ったハラスメント

③ハラスメントに遭い続けた結果と転機

④ハラスメントについて声を上げるとき

⑤現在

 

①ハラスメントの定義

 

まずハラスメントの定義だが、

厚生労働省を始め大学や企業などが運営する様々なサイトで定義されている。

大阪医科大学のハラスメント防止委員会が分かりやすくまとめていたので

少し内容をお借りしてきた。

 

ハラスメント(Harassment)

いろいろな場面での『嫌がらせ、いじめ』のこと。

その種類は様々であり、他者に対する発言・行動等が本人の意図には関係なく、

相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること

を指す。

(大阪医科大学HPより引用・改変)

 

ここに性別に関連する事項が含まれるとセクシャル・ハラスメント

教育機関の上下関係に関わる事項であればアカデミック・ハラスメント

立場あるいは力関係の強弱によって引き起こされる事項であればパワー・ハラスメント

などのように細分化されることになる。

 

最近では血液型にまつわる「ブラッド・ハラスメント」や

結婚に関する「マリッジ・ハラスメント」など

様々な面でハラスメント事例とされるものが増えてきているため

うかつに発言してしまうとハラスメントとみなされる可能性があるという

少し生き辛い世の中になったような気もするが、

これまで陰で苦しんでいた方々にとっては

声を上げる権利が公に認められたことになる。

 

 

②私が遭ったハラスメント

 

私が遭ったハラスメントには、

直属の教授M教授

外部研究先のT教授

そして外部研究先のI講師

の3名が関わる。

 

1.アカデミック・ハラスメント

研究教育の場における権力を利用した嫌がらせ。

嫌がらせを意図した場合はもちろん、上位にある者が意図せずに行った発言や行動も含まれる。

 

まず私が「ハラスメントだ」と認識した環境が大学院だったため、

アカデミック・ハラスメントがまず間違いなく該当するだろう。

 

M教授:研究指導の怠慢

・基本的に外部研究先に丸投げであり、意見を求めても「私にはわからない」

などといって議論を中断する。

・博士課程修了に向けた手続きに関し、正確な情報を学生に伝えず

自分の憶測だけで準備をさせ最終的に学位審査に出すことが出来ず

卒業延長をさせた。(当然学費がかかる)

・上記卒業延長に至るまでの過程に関し、自身の非に関しては一切言及せず

私自身の不手際や外研先のせいとして周囲に説明した。

・自身の発言や指導を忘れる。

 

T教授:見解の違いに対する罵倒、研究指導の怠慢

・自分の考えを述べた際、T教授の意向に沿わない内容であった場合

「そんな考え方をするようでは研究者として失格だ」などと頭ごなしに否定される。

・論文投稿にあたり下書き等を提出しても全くレスポンスが無く何か月も待たされた挙句

「なぜ何も連絡してこないのか」とこちらのせいにされる。

・かといって、提出後1~2週してレスポンスが無い時に状況確認の連絡をすると

「しつこい」「タイミングがおかしい」などとなじられる。

・自身の発言や指導を忘れる。

 

I講師:学生を軽んじる発言、研究と家庭の両立に関する介入

・自分の意見を述べると「学生のくせに」「学生の分際で」と罵る。

・I講師のプラン通りにやらないと「やる気が無い」という評価になる。

・些細なミスについて、大声で叱責、メールで深夜まで叱責、人前でなじる。

・「Aが出来ない人はどうせBもできない」「研究が出来ないものは家庭生活だってまわせない」

など関連の無いもの同士を結び付けて侮蔑する。

・自身の発言や指導を忘れる。

 

 

2.パワー・ハラスメント

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、

業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える

又は職場環境を悪化させる行為をいう。

 

これは外部研究先のI講師が、私に限らずその研究室内の研究員の方々に対する

行為が該当すると思う。

 

・「指導」と称してメールの仕方や話すときの立ち位置(ひざまずく体勢)も含め

気に入らない場合は相手から謝罪の言葉が聞こえるまで徹底的に言葉で攻撃する。

・「何でも聞いて」「何かあったらすぐ連絡して」という割に、

だいたいの連絡に対し「そんなことで連絡してくるな」と言われる。

・その結果連絡をしなくなると、「何の連絡もないとはどういうことか」と怒られる。

・9時~18時の決まった勤務時間に対し、その時間枠を超えての仕事を強要する。

・I講師の意にそぐわない態度をとると、T教授に根も葉もない話か

事実を針小棒大にした話を伝えられてしまう。

 

 

3.モビング/モラル・ハラスメント

言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、

肉体的、精神的に傷を負わせて、職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、

職場の雰囲気を悪くさせること。

 

これもI講師が該当すると思う。

 

・「あなたの研究にはもう関わらないから」と突然無視し始める。

・「あいつは嘘つきだ」「頭がおかしい」「あんなにしてやったのに恩知らずだ」などと

本人がいないところで他人に勝手なことを吹聴する。

(言われるのももちろんつらいが聞かされるのもたまったものでは無い。。。)

 

 

4.セクシャル・ハラスメント

本人が意図する、しないにかかわらず、相手が不快に思い、

相手が自身の尊厳を傷つけられたと感じるような性的発言・行動を指す。

 

・妊娠の報告が遅れたことに関して(といっても2か月~3か月の頃には報告したが)

「信用できなくなった」などと言われた。

・妊娠したことについて「自業自得」などと言われた。

 

 

③ハラスメントに遭い続けた結果と転機

 

②で挙げた1~4のハラスメントのうち4はハラスメントへの対応に慣れてから事であるため

至って冷静に対応していたが、

1~3は4年間受け続けたことになる。

 

その結果私自身に徐々に変化が起こり始める。

 

1.先生方の意向を第一に考え、自分の考えや意見は押し殺す。

2.目的達成のために私生活をすり減らすのが当たり前だと考えるようになる。

3.叱責されるのは自分が至らないせいだと思い込むようになる。

4.家族に大学院や研究の話や愚痴を言わなくなる。

5.研究室の友人に会ったりゼミで発言することが辛くなり、できなくなる。

6.頭が回らなくなり、決まった工程がこなせなくなる。(研究だけでなく家事も。)

7.物忘れが激しくなる。(研究だけでなく家事も。)

8.訳もなく涙が出てくる。

9.趣味であったクラシックバレエやマラソンに通わなくなる。

 

9に至ったとき。

ああ、今自分は正常ではないんだと自分で気づくことができた。

これまでどんなに忙しくても、どんなにしんどいことがあっても

趣味を犠牲にすることはなかった。

むしろうまくいかない時こそ思いっきり体を動かして一度思考をリセットするという

私にとってのルーティーンがあったからだ。

 

気づいた日の夜、夫に泣きながらこれまでの事を話した。

このときの状況や状態についても話した。

気持ちが高ぶっていたのでおそらく意味不明な状態だったと思うが

夫はただただじっと話を聞いていてくれたのを覚えている。

そして、

「もう、大学辞めたらいいんじゃない?」

と言った。

「大学を辞めたっていいし、休んだっていいんだから。

そんな先生たちの元で研究をしていったい何だっていうの。」と。

 

辛い場から撤退する

 

ごく単純な選択肢を全く思いつくことが出来なかったことに驚いた。

というより、「逃げていいんだ」とすら思った。

自分にとって新しい考えに触れたこの時が

再び這い上がる転機となった。

 

後日メンタルクリニックを受診した。

軽度ではあるがうつ病と診断された。

治療として特に何ができるわけではないが、週に1回カウンセリングを受けた。

意味があるとか無いとか賛否両論あると思うが、

私のように思考回路がぐちゃぐちゃになってる人にとって

カウンセリングは有用だったと思う。

始めはポツリポツリと聞かれたことを話し、

徐々に自分のことを自分から話せるようになり、

医師から自分のことを肯定してもらえるたびに少しずつ自信を取り戻していった。

(ちなみに研究室はは通院中と教授らに伝えた上で休み休み通っていた。)

 

カウンセリングの中で、趣味に話が至った。

クラシックバレエとマラソンが趣味である旨を話したが、まだ復帰できてはいなかった。

すると、

「じゃあ得意なことは何?」

と聞かれた。

少し考えたのち「絵を描くこと、似顔絵とか得意ですかね。」

と答えた。

すると医師から、

「じゃあ今の気分とか、描きたいものとか、何でもいいから絵を描いたらいいよ!」

と言われた。(これが偶然にも私の似顔絵描きとなる起点となった。)

 

帰宅後夫に話すと、

翌日画用紙と画材をいろいろ買ってきてくれた。

本当に優しい夫である。

私の最初の作品は「TVゲームに没頭する夫」だった。(笑)

 

普段通りになるまでに半年ほどかかっただろうか。

気持ちが落ち着いた頃思った。

「・・・このまま無かったことにしてたまるか」

 

 

④ハラスメントについて声を上げるとき

 

さて、こういう事が起こったということをどうにかして残したい。

とはいえ、たとえ事実を述べるにしても先生たちから受けた仕打ちを

あちこちで言いふらすというのはあまり適切ではない。

 

冒頭の「ハラスメントの定義」にあるように、

人がハラスメントであると思ったらその烙印を押されるのだから

教授らからハラスメント被害を出されたり

場合によっては名誉棄損で訴えられるかもしれない。

 

また、まだその研究室で研究を行わなければならなかったので

下手に動くと研究のできない状況が生まれる可能性がある。

 

そこで私は大学のハラスメント委員会に相談することにした。

 

ハラスメント委員会は会社や大学にはおおよそ設置されていると思う。

相談時は匿名性が守られ情報として記録されるが、

状況が進みにつれて該当者を交えた話し合いを経て、

ハラスメントが認定された場合には処分が為される。

場合によっては裁判に至る。

 

このとき注意したいのは、

ハラスメント委員会の委員が、自分のハラッサーとどういう関係にある人か

事前に調べておくことだ。

 

たとえば大学では

各学部ごとにハラスメント委員会が置かれている場合がある。

そうすると、

ハラスメント自体が気のせいだったんじゃないか、のように

相談しても学部内での問題を極力もみ消すために該当者を擁護する可能性がある。

また、場合によっては相談時の匿名性が失われ、

訴えや処分を希望する前にハラッサーから更なるハラスメントを受ける危険性も生じる。

 

そのため、

出来るだけ当事者との関係がない第3者がハラスメント委員である委員会に

相談を持ち込むことが望ましいと私は考える。

大学であれば少なくとも他学部、

会社であれば社内ではなく外部相談機関のほうが良いだろう。

 

また、話に行くときは頭に血を登らせて行ってはいけない。

なぜなら、自分の状況を客観視していることが伝わらなければ

単なる被害妄想として取り扱われ、聞く側も冷静な判断ができなくなるからだ。

受けたハラスメントの時系列を整理し、

可能な限り記録を残し(記述や録音。自分の場合記述とメールのやり取り全て。)、

ハラスメントを受けたことを証明できる第3者をたてておくことを勧めたい。

 

そして、本件の落としどころがどこなのかを明確にしておくことが重要である。

ただ文句が言いたいだけなら、

ハラスメント委員会にわざわざ出向く必要は無い。

ハラッサーとの関係をどうしたいのか、ハラッサーにどうしてほしいのか

この点についてしっかり考えを持つことが大切である。

 

私の場合、この時点で訴訟にしようとまでは考えていなかった。

それは、卒業に向けて忙しいときに訴訟で戦うなんて不可能だったからだ。

ただ、本件が「ハラスメント事例に該当するかどうか」の判断をしてもらいたかったのだ。

相談後本件はかなり重度のハラスメントだと認定され、

ハラスメント委員会の中央局に教授ら及び講師の所属・名前とともに

報告された。

現時点では処分が下されたり訴訟になったりということにはならないが、

私を含め2度目の訴えが彼らに来た場合、

無条件に3者面談会議が為される状態、「地雷状態」となった。

 

 

 

⑤現在

 

さて、今はごく平和に日々を過ごしているわけだが、

これまでの過程を経て

・ヤバいやつには必要以上に関わらない

・何か不快なことを言われたら、「ストレス溜まってるのね可哀想に」と憐れむ

ことを念頭に置くことを学んだ。

 

因みに

あくまでも私の主観であるが

ハラッサーとなる人たちは

これまでの人生の中で何かトラウマやコンプレックスを抱えている人

あるいは頭脳・知能・仕事能力などが本当に高いがゆえに、自分と同じレベルでできないものを許せない/信じられないという人

が多いのではなかろうか。

 

人それぞれの個性やレベルを

おおらかな気持ちで受け止めた上で

それぞれに合った対応が出来る人こそ

尊敬に値すると私は思っている。