こはるちゃんはいじけると、 

壁に向かってふみふみします。
 
 
さて

 

私が親に、義理兄のことをカミングアウトしたのが15歳、

両親が離婚し、家を出たのが20歳。

 

その間、5年間。

義理兄からの性的虐待は確か一度も無かったように思う。

 

どうやって、どのように義理兄を遠ざけたのかは覚えていない、記憶が無い。

義理兄に捕まらないよう、来そうな日には外へ出ていたのかも知れないし、

義理兄が私を呼び付けないよう、母がそれとなく気を回したのかも知れない。

 

その頃は義理兄も結婚していて子供も出来、それどころでなくなったのかも知れない。

また、さすがに中学生にもなった私を口止めしておくのは難しいと考えたのかも知れない。

 

とにかく、親に話してからは虐待は無くなった。

そして両親の離婚が成立し、私は義理兄と繋がる戸籍から抜けることが出来た。

 

しかし私は、ある可能性をいつまでも恐れていた。

それは、私が誰かに虐待の事実を口外しないよう、義理兄が私の口を封じるために

私を殺しに来ることだった。

 

そんなドラマのようなことは考えられない、と普通は思うだろうか。

 

けれど私が義理兄の立場だったとしたら、誰かに喋られはしないかといつもびくびくするに違いない。

幼児のことは脅せても、ある程度大人に近づいてきた年頃の女の子なら、

誰かに相談し、喋ってしまうのではないかと。

 

なんたって相手は拳銃を持っている。

仏壇を壊せるようなおそれを知らぬ人間なら、口封じに人殺しくらいしかねない。

 

私の居場所など、戸籍や住民票を辿ればすぐわかってしまう。

私は、来るか来ないかわからないものに、いつでも怯えていた。

 

その頃の私は街でパトカーとすれ違うたび、いつも運転席を確認する癖がついていた。

帽子の下から見えるのは、あの義理兄の顔ではないかと。

あの頃のように、脅すような目つきでこちらを睨んでいるのではないかと。

 

なぜ私の方がビクつかなければならないんだと思うけれど、理屈ではない。

私は免許の更新で警察署へ行くときも、どこかにあの男がいるのではと気が気でなかった。

 

 

・・・こんな人間が警察官として働いているなんて。

今時じゃあ、先生だろうが警官だろうが、性犯罪者は珍しくないですけど。

 

「こち亀」に憧れて警官になった割には、両さんには程遠い義理兄。

家を出てからは、現在に至るまで一度も会っていない。