2009年。アメリカ。"(500) Days Of Summer".
  マーク・ウェブ監督。
 『恋人はゴースト』や『フォーチュン・クッキー』で知られるマーク・ウォーターズ監督が製作した恋愛コメディ。主人公トムがサマーという女性と出会い、振り回されたあげくにふられるまでの500日間を描いた作品で、トムの自己中心的な妄想混じりの回想だけで物語が進む点が目新しさになっている。
 サマーという女性はトムの回想の中に登場する人物なので、サマーがそのとき何を考えていたのかは全くわからない。物語の内容は単純で、サマーという女性と出会い、恋に落ちたが、何かよくわからないうちにうまくいかなくなって、ふられてしまった、これは運命的な恋だと思い込んでいたが、どうやらサマーにはそういう気はなかった、という1行で終わってしまうものなので、90分持たせるために時間軸をバラバラにして、恋がうまくいくと信じていた最初の頃や、感情のもつれが生じて修復しようと努力していた時期、これはもう修復不可能だと悟った終わりの時期などが順番はトムの思い出すままに出てくるような印象があって、現実的に見える仕組みになっている。

 トムが思い通りに進展しない恋に思い悩んで映画館に行ってひとりで古いフランス映画を見る場面で、これはトリュフォーの『突然炎のごとく』みたいだと思ったら、この映画のために作られたにせフランス映画だったが、このにせフランス映画から、この映画が目指しているのはトリュフォーの映画でジャン=ピエール・レオが演じていた「アントワーヌ・ドワネルの冒険」シリーズ(『大人は判ってくれない』、『アントワーヌとコレット』、『夜霧の恋人たち』、『家庭』、『逃げ去る恋』)を21世紀のアメリカで再現するようなものだと気づいた。
 ジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じるトムのふられるべくしてふられる妄想男ぶりはジャン=ピエール・レオが演じていたアントワーヌ・ドワネルにそっくりで、他人事ではない痛々しさも共通している。

 トムがサマーと出会ったのが最近なのか10年以上前のことなのか時代設定がよくわからなかった、ザ・スミスをきっかけにしてサマーと出会う場面を見て、2000年前後かもっと前を想像していたら、IKEAでじゃれ合う場面などはつい最近だったようにも見える。流れる音楽は1990年代を思わせる感じだったが、21世紀のアメリカ映画でザ・スミスをきっかけに始まる男視点の恋物語というのはかなり変な印象があった。フォックス・サーチライトの映画だと考えるとそれほど変にも見えないが、やはり限られた層をターゲットにした映画であることには間違いない。
IMDb       公式サイト(日本)
映画の感想文日記-summer1
 ジョセフ・ゴードン=レヴィットはどこかで見たことがあると思ったら、『BRICK ブリック』の主役の青年だった。UKロックおたくの典型的なパターンにぴったりの容姿をしていた。
 ズーイー・デシャネルは10年近く前の『グッド・ガール』や『あの頃ペニー・レインと』の頃からあまり変化が見られない、年齢不詳のアメリカ版の千秋みたいな不思議系の役柄だったが、ときどきおばちゃんぽく見える場面もあった。しかし、ズーイー・デシャネルほどこの映画にぴったりな女優は他にいないだろう。
 生意気な口をきくトムの妹やバナナマンの日村に似た職場の同僚など周囲の登場人物にも面白いキャラクターがあった。
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