2009年。アメリカ。"Public Enemies".
マイケル・マン監督・製作・脚本。
マイケル・マンがジョニー・デップ主演でジョン・デリンジャーの物語を映画化したと聞いたときに、すぐに思ったことは、これでジョン・ミリアス監督の大傑作にして最高にすばらしい俳優のひとり、ウォーレン・ウォーツ主演の『デリンジャー』 (1973年)がDVD化されて発売されるに違いない、ということだったが、残念ながらいまだにその気配はない。
失われゆくものへの郷愁と暴力とが同居したジョン・ミリアス版の『デリンジャー』では、ジョン・フォードの映画へのあこがれが強かったが、音楽もすばらしかった。
民衆のヒーローとして人気者であることに満足していた自己顕示欲の強い男としての面と、ずる賢い銀行強盗の小悪党としての面とが入り混じった複雑な人格をウォーレン・ウォーツが見事に演じきっていた。
マイケル・マンと聞くと、「カッコつけすぎ、気取り過ぎの映画ばかり作る人」というイメージがあるのは、『マイアミ・バイス』、『コラテラル』、『ヒート』といった映画が過去にあったからで、どれも銃撃戦のシーンだけは気合が入っているが、好きではないというより興味のない作品だった。
ちょっと見直したのは、『インサイダー』というラッセル・クロウ主演の映画を見てからだった。
なぜジョン・デリンジャーが民衆からヒーローとして支持されたのかについては、この映画を見る限りではわからないが、ジョニー・デップとマリオン・コティヤールの好演によるものか、この映画はラストシーンで美しい純愛メロドラマとして完結している。
ジョン・デリンジャーが最後に見た映画、クラーク・ゲイブル主演の『男の世界』(1934年)の中のシーンがいくつか映し出されていたが、気になって仕方がない。この映画を見てみたいが、DVD化はされていない。
死にざままでカッコ良かった男、ジョン・デリンジャーになりきって演じていたジョニー・デップがすばらしい。デリンジャーが生涯で唯一の愛した女ビリーを演じるマリオン・コティヤールも良かった。
ベビー・フェイス・ネルソンを演じた俳優や、その他の脇役にもそれぞれ見せ場があり、特にラストシーンでビリーに面会に訪れて、ジョニーからの伝言を告げるウィンステッド捜査官を演じたスティーヴン・ラングの存在感が光っていた。(最後に全部持っていかれた感じもある。)
マイケル・マンの映画が初めて気取って見えなかったのは、やはりジョニー・デップ効果かも知れない。
IMDb 公式サイト(日本)
パブリック・エネミーと聞くと、ある年代以上の人はヒップホップのチームを連想してしまうが、アメリカでは一般的にはジョン・デリンジャーや、ブラック・パンサー・パーティー、チャールズ・マンソン・グループ等を指すのだろう。
しかし、現在ではこの映画に登場していたジョン・エドガー・フーバーFBI長官が民衆の敵としては知名度が高いのかも知れない。
『パブリック・エネミーズ』と複数形になっているのは、そういった皮肉をこめてあるのだろうか。
そういえば、すでに忘れ去られた映画、『アメリカン・ギャングスター』(2007年)のエンディングでパブリック・エネミーの曲が使われていてリドリー・スコット監督のセンスを疑ったものだった。
悪い男だが義理と人情にあつい義賊、デリンジャーと、悪い男にほれてしまった一途な女の悲劇的なメロドラマとしてみると、かなりいい線いっていた。
『バイバイブラックバード』という当時のジャズのヒット曲が効果的に使われていた。
「悪役」のふたり、クリスチャン・ベイルと『ウォッチメン』のビリー・クラダップも悪徳ぶりがにじみ出てくる好演で物語を盛り上げる。
マイケル・マンなので、やはり時々、カッコつけて思わせぶりな演出や気取ったシーンがないわけではなかったが、意外と気にならなかった。銃撃戦のシーンは相変わらずさえている。
映画としてすぐれているかどうかはわからないが、心を打たれる愛の物語としてはすばらしい映画になっていた。
これを機会に、この『パブリック・エネミーズ』より明らかにすばらしい(心の記憶の中では)ウォーレン・ウォーツ主演の『デリンジャー』をDVD化して販売してもらいたい。
マイケル・マン監督・製作・脚本。
マイケル・マンがジョニー・デップ主演でジョン・デリンジャーの物語を映画化したと聞いたときに、すぐに思ったことは、これでジョン・ミリアス監督の大傑作にして最高にすばらしい俳優のひとり、ウォーレン・ウォーツ主演の『デリンジャー』 (1973年)がDVD化されて発売されるに違いない、ということだったが、残念ながらいまだにその気配はない。
失われゆくものへの郷愁と暴力とが同居したジョン・ミリアス版の『デリンジャー』では、ジョン・フォードの映画へのあこがれが強かったが、音楽もすばらしかった。
民衆のヒーローとして人気者であることに満足していた自己顕示欲の強い男としての面と、ずる賢い銀行強盗の小悪党としての面とが入り混じった複雑な人格をウォーレン・ウォーツが見事に演じきっていた。
マイケル・マンと聞くと、「カッコつけすぎ、気取り過ぎの映画ばかり作る人」というイメージがあるのは、『マイアミ・バイス』、『コラテラル』、『ヒート』といった映画が過去にあったからで、どれも銃撃戦のシーンだけは気合が入っているが、好きではないというより興味のない作品だった。
ちょっと見直したのは、『インサイダー』というラッセル・クロウ主演の映画を見てからだった。
なぜジョン・デリンジャーが民衆からヒーローとして支持されたのかについては、この映画を見る限りではわからないが、ジョニー・デップとマリオン・コティヤールの好演によるものか、この映画はラストシーンで美しい純愛メロドラマとして完結している。
ジョン・デリンジャーが最後に見た映画、クラーク・ゲイブル主演の『男の世界』(1934年)の中のシーンがいくつか映し出されていたが、気になって仕方がない。この映画を見てみたいが、DVD化はされていない。
死にざままでカッコ良かった男、ジョン・デリンジャーになりきって演じていたジョニー・デップがすばらしい。デリンジャーが生涯で唯一の愛した女ビリーを演じるマリオン・コティヤールも良かった。
ベビー・フェイス・ネルソンを演じた俳優や、その他の脇役にもそれぞれ見せ場があり、特にラストシーンでビリーに面会に訪れて、ジョニーからの伝言を告げるウィンステッド捜査官を演じたスティーヴン・ラングの存在感が光っていた。(最後に全部持っていかれた感じもある。)
マイケル・マンの映画が初めて気取って見えなかったのは、やはりジョニー・デップ効果かも知れない。
IMDb 公式サイト(日本)
パブリック・エネミーと聞くと、ある年代以上の人はヒップホップのチームを連想してしまうが、アメリカでは一般的にはジョン・デリンジャーや、ブラック・パンサー・パーティー、チャールズ・マンソン・グループ等を指すのだろう。
しかし、現在ではこの映画に登場していたジョン・エドガー・フーバーFBI長官が民衆の敵としては知名度が高いのかも知れない。
『パブリック・エネミーズ』と複数形になっているのは、そういった皮肉をこめてあるのだろうか。
そういえば、すでに忘れ去られた映画、『アメリカン・ギャングスター』(2007年)のエンディングでパブリック・エネミーの曲が使われていてリドリー・スコット監督のセンスを疑ったものだった。
悪い男だが義理と人情にあつい義賊、デリンジャーと、悪い男にほれてしまった一途な女の悲劇的なメロドラマとしてみると、かなりいい線いっていた。
『バイバイブラックバード』という当時のジャズのヒット曲が効果的に使われていた。
「悪役」のふたり、クリスチャン・ベイルと『ウォッチメン』のビリー・クラダップも悪徳ぶりがにじみ出てくる好演で物語を盛り上げる。
マイケル・マンなので、やはり時々、カッコつけて思わせぶりな演出や気取ったシーンがないわけではなかったが、意外と気にならなかった。銃撃戦のシーンは相変わらずさえている。
映画としてすぐれているかどうかはわからないが、心を打たれる愛の物語としてはすばらしい映画になっていた。
これを機会に、この『パブリック・エネミーズ』より明らかにすばらしい(心の記憶の中では)ウォーレン・ウォーツ主演の『デリンジャー』をDVD化して販売してもらいたい。
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