2006年。NHK。
  清水一彦(前篇)・井上剛(後編)演出。横山秀夫原作。
 レンタル店のちょっと目立つ場所に置いてあったので、手にとってみると、NHKで2005年に放送されたテレビドラマで、前篇・後編合わせて150分の長編ドラマなので、もうすぐ公開される映画と同じ原作(読んでいない)でもあり、ちょっと興味を持って見てみたら、
 これが無茶苦茶に面白いドラマで、結局、深夜までかかって一気に見てしまった。
 全く知らなかったが、放送当時は質の高いドラマとして話題になったものらしく、この年のギャラクシー賞(放送批評家懇談会が与える賞)の優秀賞を受賞している。(大賞は『タイガー&ドラゴン』が受賞しており、何となく納得した。)

 このドラマを見て思ったことは、「テレビドラマって、こんなに面白いものだったっけ?」というもので、全部のドラマがこれだけ面白いなら、映画館からは人の姿が消えるだろう。
 (テレビドラマで過去5年ほどに見たのは、『タイガー&ドラゴン』と、『時効警察』と『帰ってきた時効警察』くらいしかないので、判断不可能だが。)
 それと同時に、7月に劇場公開される映画版は、果たしてこのテレビドラマを超えることが出来るのか、と心配にもなってきた。
 それくらいに完成度が高い人間ドラマが描き出されており、この見事さを上回るのには、相当の演出の力と制作スタッフや俳優の集中力が要求されるとも思われるので、おそらく映画版の方がつまらない、という可能性はかなり高い、という予感がする。
 7月5日の公開を待ってみないと何とも言えないが。(試写会のチケットを持っていたのに行かなかったので、もったいないことをした。)
climb1
 出てくるだけで映画館のスクリーンから生気を奪うダメ俳優、というイメージが定着したように思える佐藤浩市(『ザ・マジックアワー』を見ても、そのイメージに変更はなかった)が、驚くべきことに、このテレビドラマでは素晴らしかった。
 部下を演じていた大森南朋(この俳優は逆に出てくるだけで映画が動き出すようなイメージがある)の影響力かも知れない。
climb5
 1985年8月12日に起こった日航ジャンボ機墜落事故の際に、登山用語でいう「クライマーズ・ハイ」(興奮状態が極限にまで達し、恐怖感を感じなくなってしまう危険な状態)におちいってしまった、ある地方新聞の記者たちの、混乱に満ちた1週間を描いた作品。
 このテレビドラマはその「クライマーズ・ハイ」を見事に描き出していて、見ている者にまで「クライマーズ・ハイ」状態がのり移ったような錯覚にとらわれるほどだった。
climb3
 記者たちの配役も適確で、特にいやみなようで、理解力もある上司を演じる岸部一徳の好演が光った。
climb6
 ワンマン社長を演じる杉浦直樹の恫喝する迫力もすごかった。
climb11
 光石研、新井浩文、塩見三省、松重豊、山中聡、赤井英和、寺島進、伊武雅刀、岸本加世子、石原さとみ、など、どちらかと言えば映画寄りの俳優が集められていたことも、ドラマを濃いものにしていた、ように見えた。
climb2
 石原さとみ演じる女性が後半で波乱を引き起こすことになる。
climb4
 新聞社内部の派閥争い、編集部と販売部との対立、などさまざまなレベルでの対立が浮き彫りになりながら、秒単位での時間との競争の物語が進行してゆく。テレビドラマで手に汗を握るような興奮を経験したのは、初めてのことのような気がする。(ほとんどテレビを見ないからでしょうが。)
 当時のニュース映像をそのまま使えるというNHKならではの強みもあり、リアリティが増していた。
climb9

climb8
クライマーズ・ハイ/佐藤浩市
¥4,042
Amazon.co.jp
クライマーズ・ハイ (文春文庫)/横山 秀夫
¥660
Amazon.co.jp