2008年。「山桜」製作委員会。
   篠原哲雄監督。藤沢周平原作。
 田中麗奈、東山紀之、その他出演。
 山田洋次監督の時代劇シリーズなど、ある一定の面白さは保っていた(といっても、ほとんど記憶には残っていない)藤沢周平の原作の映画化作品なので(藤沢周平の作品は1冊も読んだことはない)、
 もしかしたら素晴らしい映画かも知れない、というかすかな期待があった。

 今年は、映画を見て、びっくりすることが多い年のような気がする(呆然とする、というのが正しい表現だろう)が、この映画も、『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」、『少林少女』、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』、『僕の彼女はサイボーグ』(思い浮かんだものだけ)などに続く、「びっくり映画」のひとつだった。(よくない言葉で言えば、最低のゴミ映画ともいうが、そこまでのひどさはない、とも思った)。

 年配の夫婦づれらしき人々を中心に、案外と客席は埋まっていたが、みな一様にびっくりしていたような気配が感じられた。
 何か、変だな、と思っていると、突然、時代劇なのに、軽薄な感じのJ-POPの曲(一青窈の『栞』という曲らしい、ファンの人にとっては素晴らしい名曲なのだろうが)が流れ始めて、時代劇にこの曲はいくら何でもちょっと、と思っているうちに、いきなりエンディングを迎えて、「何じゃこりゃ?」という感じで終わってしまった。

 この映画は一体全体、何だったのか。謎が多い。
 俳優はそれぞれに悪くはないどころか、素晴らしかったような印象がある。東山紀之の立ち居振る舞いも時代劇俳優だといっても通用するほどに見事なものだったように見えた。
 田中麗奈も素晴らしく、脇の俳優もそれぞれに適材適所で好演していたような気がする。
 脚本と演出に不思議さと奇妙さがあった。(単にとても下手なだけだとも思った。)
        公式サイト
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 一応はどう見ても時代劇だが、資本主義経済の下での物語のように見えて仕方がなかった。
 農政に利権を持つ悪徳政治家が、資本家とグルになって、自分たちの権力と財力の拡大をたくらむ。しいたげられた農民が無駄に死んでゆくのを、見るに見かねたひとりの青年がテロリストとなり、悪徳政治家を暗殺する、というロシア革命前夜のような物語。
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 田中麗奈と東山紀之との報われない愛の物語かと思っていたら、二人が出会うのは、冒頭の場面での桜の木の下での一瞬だけで、
 その後は、それぞれに相手のことを想い出したりはするものの、時代の制約もあり、どうせかなわぬ想いだと、二人とも最初からあきらめ切っているので、ただ単に相手を想うだけの物語になっていることも、変な印象を強めていた。演出次第では、すぐれたドラマが生まれる可能性もある設定だとは思った。
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 極端に意地悪な女のキャラクターになっている姑(永島瑛子)にいじめられる場面あたりまでは、これは面白い映画になるかも知れない、という期待があっただけに、もったいない、という印象が強い。
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 金持ちではないが誠実に生活する父親を演じる篠田三郎も良い雰囲気だった。
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 悪役の村井国夫も憎まれ役を好演していた。斬られて血が出ないのは不自然だったが、上品なドラマなので、それはそれで、ありかな、とも思っていた。
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 悪徳金融業者の家へ嫁に行った娘を気づかいながらも、貧乏人よりは金持ちと暮らす方が最終的には幸福なのだと自らに言い聞かせる複雑な親心を見せる檀ふみも悪くはなかった。
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