2007年。英国/米国/日本/オーストラリア。"CONTROL".
アントン・コービン監督。
 ジョイ・ディヴィジョンにもニュー・オーダーにも興味がない、ファクトリー・レーベルの音楽を面白いと思ったこともない、マンチェスター・サウンド自体を退屈なものとしか思えない、
 という者から見ると、この映画は意外にも面白いメロドラマとして見ることが出来た。
 モノクロの画面のせいもあるのか、1960年代のニューウェイブ(ヌーヴェルヴァーグ)に影響された、才能のない大学生が作った恋愛悲劇のように鑑賞することが出来た。
 しかも演出は1960年代よりも古くさいもので、映画がもっともダメな時期だったと思われる1980年代みたいな感覚が感じられる。

 1980年5月18日に、アメリカツアーの直前に首吊り自殺というかたちで、23歳で世を去った伝説のロックバンド、ジョイ・ディヴィジョンのリーダーだったイアン・カーティスの短い生涯を描いた物語。
 原作となったものが、イアン・カーティスの妻だったデボラ・カーティスという平凡な主婦だったらしい人物が書いたものなので、イアン・カーティスという人物もかなり平凡な人物だったように見える。
 それがかえって、メロドラマとしての面白さを作り出していた。

 おそらくジョイ・ディヴィジョンにある程度の想いを持っている人々にとっては、「イアンはこんな単純な人物ではなかったはずだ。」という反発を感じる部分も多いのかも知れない。

 19歳で結婚し、職業紹介所(ハローワーク)で失業者に対して、親身になって相談にのる有能な公務員であったというイアン・カーティスの昼間の顔は意外だった。
 若くして結婚し、一児の父親として、バンド活動が軌道にのってからも職業紹介所の仕事をやめなかったことにも、他の無軌道な青春を送るバンドの若者とは異なる考えを持った人物だったことが想像できる。
 それでありながら、ジョイ・ディヴィジョンは「狂気に満ちた頭のいかれたクールなバンド」として脚光を浴びたことには、何か大きな断絶があったように見える。

 ベルギー大使館勤務の女性との不倫関係が泥沼化したこと、バンドが有名になり過ぎて、自分がイアン・カーティスというキャラクターを演じさせられているように感じ始めたこと、てんかんの発作が悪化してゆき常に死を身近に考えていたこと、などが自殺の原因になったように描かれているが、
 かなり表面的な見方だという印象はあり、イアン・カーティスという人物は、もっと複雑な人格で、得体の知れない心の闇を抱えていたのではないかとも思われた。
      IMDb         公式サイト(日本)
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 イアン・カーティスを演じるサム・ライリーは、実在のイアン・カーティスに成りきっていたらしいが、『24アワー・パーティ・ピープル』という映画でイアン・カーティスを演じていた俳優を見たことしかないのでわからない。
 かなりの熱演ではあった。
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 パンクやニューウェイブは一時期熱心に聴いてみようとしたが、どれもピンとこなかった。全体に共通して感じたことは志は高いが、演奏や曲作りがそれにともなっていない、というむごたらしさのような感じだった。
 若くして死んでしまった者が多いこともそういったことが影響していたのかも知れない。

 ただ、ザ・ポップ・グループを聴いたときだけは、「これはすごいかも知れない。」と思って、その後ポップ・グループのメンバーがジャズやファンクのミュージシャンと共同で音楽活動をしていたこともあり、ブラック・ミュージックに興味を移し、ザ・ポップ・グループが影響されていたらしいアート・アンサンブル・オブ・シカゴには大きな衝撃があった。
 今でも聴くのはアート・アンサンブル・オブ・シカゴなどのフリージャズだけになってしまったので、映画の中で使われるロックは正直なところ退屈なだけのものだった。
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 もっとも幸福な時期だったと思われるデボラ(『エリザベス・ゴールデンエイジ』での好演が記憶に新しいサマンサ・モートン)と結婚し、公務員として熱心に仕事をしていたころのイアン。
 しかし、セックス・ピストルズのライブを眼にしてしまったときから、大きな変化が訪れることになる。
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 ベルギー大使館職員のアニーク(アレクサンドラ・マリア・ラーラ)との愛人関係を断ち切ることが出来ない。
 妻の視点から書かれた物語にしてはアニークという女性の存在は案外と公平に描かれていたようにも見えた。
 実際のところは関係者がほとんど存命中の物語なのでわからないが。
 自分のようにロックという音楽に興味のない人が見たら、面白い映画ではないか、と思った。

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