2008年。WarnerBros.Pictures.Japan.
堤幸彦監督。
 人気テレビドラマの劇場版らしいが、元のテレビドラマを知らないので、よくわからない点とかがあるのかと思ったら、そういう心配は不要だった。
 テレビの延長らしいせりふとかが最初のほうには少しあったが、ほとんど気にならないで、何となくどういう設定だったのかが想像できるようにはなっていた。
 基本的にはハズレ映画ばかりを作るが、ときどき『包帯クラブ』 みたいに、ちょっとおやっと思わせるような作品を演出したりもするので、あなどれない堤幸彦監督に少しの期待はあった。

 2時間弱の映画で、オープニングからの40分くらいはテンポが良くて快調に飛ばしている感じで、これはひょっとしたら、面白いのかも知れない、
 と思い始めた頃から、だんだんダラダラした雰囲気になってきて、少し眠くなった。最後の30分くらいは、ひたすら早く終わってくれ、と願い続けた。なかなか終わらないことにイライラさせられてきたのは、明らかに後半は物語が失速してしまっているためだろう、と思った。
 脚本がダメなせいではないだろうか。

 この映画が目指そうとしたものがよくわからなかった。全く笑えないギャグをマシンガンのように連発することで、画面からただよってくる寒々しさを笑ってもらおうという二重構造のコメディになっていたのかも知れない。
 それにしては、最初の30分くらいは中途半端におかしいので、だんだんギャグが空回りしてきたような印象を受けてしまう。
 200個くらいあったような気がするギャグはほとんど全部すべり倒していたが、ときどき、ふとした間におかしみが生まれる瞬間はあった。
 意外と入っていた観客の誰一人として笑ってはいなかったが。
 おそらく、ほとんど私以外の全員がKAT-TUNの中丸雄一か、堂本光一目当てで見に来た女子のお子さまがたばかりだったので(おばちゃんもいたかも知れない)、ギャグが高度すぎたのかも知れない。(というほど高度なコメディ演出などなかったが。)
 ゴールデン・ウィークに何のあてもなく、いい年をした大人がお子さまに混じってこんな映画を見てしまった孤独感がよりいっそう深まるのを感じた。しかし、振り返って考えれば、この数年まともにゴールデンウィークの休みなどなかったので、自由な時間があるだけでも幸福なことかも知れない。
       公式サイト
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 タイトルどおりにスシ王子、こと米寿司(堂本光一)がニューヨークに寿司の修行のためにやって来て、スシ名人、俵源五郎(北大路欣也)に弟子入りする物語。
 北大路欣也はシリアスなドラマのときと演技の質を特別に変えることもなく、普通に演じていた。そこからおかしさが発生していなかったのが、なかなかにつらかったような気がする。
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 『硫黄島からの手紙』以降、どこへ行こうとしているのか、よくわからない伊原剛志が映画を何とか少しは面白いものにしていた。『ヒートアイランド』みたいなアクション・コメディ路線を進みたがっているようにも見える。
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 すし屋「八十八」(ヤソハチ)を乗っ取ろうとたくらむイタリア系マフィア、ペペロンチーノ一家との対決が物語の軸になる。ペペロンチーノが間抜け過ぎてぜんぜんこわくないので、大した盛り上がりもなかった。
 ので、中盤で唐突に殺されてしまうKAT-TUNの場面には違和感があった。
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 河太郎(中丸雄一)をたぶらかす、ニューヨーク大学の学生のふりをしたナエ(太田莉菜)。後半で悪女の正体をあらわす。どこかで見たような顔だと思ったら、妻夫木聰主演の『69 sixty nine』でレディ・ジェーンを演じていた。英語の発音がいいと思ったら、モデルとしても国際的に活躍しているらしい。
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 元傭兵で、「八十八」の用心棒をしている謎の女、稲子(釈由美子)。準主役的に出番が多いが、いまひとつ印象に残らない。監督と相性が悪かったのかも知れない。
 あるいはやる気がなかったのか。それとも演技が下手なのか、謎だった。アクションはある程度訓練を受けているのか、意外と動きが良かったように映った。
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 主役の堂本光一だけが実際にニューヨークに行って、街中で撮影をしていたようだった。あとは、おそらく全部CGで合成されたニューヨークなのだろう。
 面白くない映画だったことには間違いないが、『少林少女』とどっちかを選べ、と言われれば、迷わずこちらの『スシ王子』を選ぶだろう。本当はどっちも選びたくはない。
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