2006年。角川映画。
  大林宣彦監督・脚本。
 大分県三部作の第2作目。第1作目は『なごり雪』(見ていない)という作品だったらしいが、その存在さえ知らなかった。
 第3作目はまだ製作段階で公開はされていないようだ。『22才の別れ』というヒット曲をもとに、大分県の臼杵市と津久見市を舞台に描かれたノスタルジー調の青春映画。
 彼岸花(Lycoris)の花言葉、「ただ一人の人を想い続ける」と「悲しい思い出」とを基本に物語が描かれている。
 しかし、この映画は、文化庁の支援を受けたご当地映画のひとつであるにも関わらず、とんでもない出来ばえになっている。
 「ようこちゃんが死んだ。」という声の響きが現代と過去を行ったり来たりして、大林宣彦監督を知らない外国人がこの映画を見たら、「失敗したシュール・レアリズム」映画だと思うかも知れない、というくらいにとんでもなく、
 ノスタルジーや青春の切なさを求めてこの映画を見る人は、おそらくあまりのわけのわからなさにはじき飛ばされることだろう、と思われる。
 
 大林宣彦監督には、誰か商業主義的な押しの強いプロデューサーを監視役としてつけなければ、やりたい放題にやらせたら、大変なことになる、という実例のような、かなり変な映画になってしまっている。

 『22才の別れ』という曲は知ってはいたが、興味の範囲の外にあって、流れ去る出来事のひとつに過ぎなかったので、歌詞の内容までは知らなかったが、一応歌詞の内容をもとにした物語にはなっている。
 あまりに凝り過ぎた演出のせいで、まとまりが良くなくて、どこに焦点を合わせて見たら良いのか、判断できない状態で、失敗作だろうとは思った、
 が、もし、これがたとえば、ルーマニアの新人監督がルーマニアを舞台にルーマニア人俳優を使って作られた作品だとしたら、それを見たとき、何か深い哲学的思考を持ったすぐれた演出家が出現したなどと思って、次回作を楽しみにするかも知れない、という気もするので、実際のところはよくわからない。
        公式サイト
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 歌詞の内容に忠実に22才の誕生日を、22本のろうそくをともして二人で祝う場面もあったが、その夜別れた二人は2度と出会うことはなく、葉子(中村美玲)という女性は、故郷に帰り、お見合い結婚をしたが、出産時に赤ん坊を残して死亡する。
 という27年くらい前の回想が語られる。
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 物語の語り手は現代に生きる俊郎(筧利夫)で、俊郎を恋い慕う役の清水美砂のコメディ演技だけは、かなりおかしくて笑えた。
 俊郎に好きだと告白をする前から、すでに告白した気になって、俊郎の優柔不断さを責めたあげくに、ひとりで勝手に自爆して涙を流す、というような場面がいくつかあって、その演出だけはさえていて、面白いコメディ映画になっていた。
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 高校時代のエピソードと大学時代のエピソードと葉子が死んだという知らせを聞いたときのエピソードと現代のエピソードが、ごちゃごちゃに現れては次の場面に切り替わるので、いま見ているのがいつの時代のものなのかわからないこともあった。そういう演出の狙いもあったような気もしたが。
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 窪塚俊介、岸辺一徳、三浦友和、峰岸徹、長門裕之、山田辰夫、などと新人俳優の鈴木聖奈、中村美玲、寺尾由布樹、細山田隆人など出演俳優はぜいたくに使われていたが、それぞれに見せ場があったとは思えなかった。
 この調子で第3作目を作るのは、危険なことのような気がする。
 果たして大分県では、どういった受け止められ方をしたのだろうか。
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