2007年。アメリカ。"REIGN OVER ME".
マイク・バインダー監督・脚本・製作。
 アダム・サンドラー、ドン・チードル、リヴ・タイラー、その他出演。
 心に傷を抱えた人々が、ニューヨークで、出会って互いに治療し合ってゆく姿を描いた物語。
 評価の高い作品だったが、正直なところ、何か違和感を感じるところもあって、おそらくこの映画で深い感動を経験する人も多いのだろう、とは思ったものの、感情を揺さぶられる、ということはなかった。

 ひとつには、数多く使われている音楽(1970年代から1980年代のロックが多い)が、ほとんど興味がない、というより好きではないものが大部分を占めていたことがあった。
 ブルース・スプリングスティーン、ザ・フー、プリテンダーズ、などには関心がないので、ジャクソン・ブラウンだけにはちょっと興味があったが、趣味が合わない、という気分になった。
 アダム・サンドラーがこれまででもっともシリアスなキャラクターを演じているが、外見が同じユダヤ系ということもあるのか、髪型のせいか、ボブ・ディランみたいに見えたのは、意識的にやっていたのか気になった。

 チャーリー・ファインマン(アダム・サンドラー)みたいな人は以前、身近に存在して見聞きしていた。家族を失った悲しみではなく、仕事のストレスからそうなったもので、ふだんは引きこもりのような印象で、あるキーワードには敏感に反応して突然怒り出す、というところがそっくりだったので、ちょっといやな気分になった、ということもある。
 それなので、わざわざ911テロの被害者家族、という設定を使わなくてもよかったような気が少しした。
 ドン・チードル演じるアラン・ジョンソンもやはり心の病を持った人物として描かれている、がこれを心の病とみなすならば、おそらく日本のサラリーマンのほとんど全員が心の病気だということになるような気がする。

 中心になる二人の登場人物の周囲にいる人々もコメディ調に描かれてはいるが、それぞれに心にトラブルを抱え込んでいる。
 物語がだんだんヒューマン・コメディみたいになっていって、後味の良い終わり方になったのには好感を持った。
 ていねいに作られた佳作、といった印象が残った。
  IMDb             公式サイト(日本)
reign4
 歯科医を数人と共同で営むアラン(ドン・チードル)は街で偶然、大学時代のルームメイトで親友だったチャーリー(アダム・サンドラー)を見かけて、長い間音信不通だった彼と再会する。
 しかし、チャーリーはアランのことを憶えていなかった。911テロで妻と娘を失った悲しみから、チャーリーは過去の記憶を消去しようとしているらしいことが、次第に明らかになる。
reign1
 いつの間にかすぐれた演技派女優になったリヴ・タイラーが精神科医アンジェラの役で、すぐれたところを見せる。しかし、振り返ってみれば、もともと、ベルナルド・ベルトリッチ監督の『魅せられて』の頃から演技はすぐれていた。
 スティーヴ・ブシェミの『リターン・トゥ・マイ・ラヴ』 を見て判明したことだったが、ふだん交流を持っている映画関係者が、地味だがしっかりした演技派ばかりなのも影響しているのだろう。
reign3
 自宅にあるレコード・コレクションとXBOX(SONYの映画だからプレイステーションだったかも知れない)のテレビゲームの話題以外になると耳を閉ざすチャーリーの姿が痛々しく、あるいはコミカルに描かれる。
 ドン・チードルとアダム・サンドラーとのやりとりは面白い。基本的には、『もしも昨日が選べたら』 と少し似たところもある、ヒューマン・コメディの作りだったが、この作品はよりシリアスさの度合いが強い。
reign2
 夫の浮気が原因で頭がおかしくなったドナ(サフロン・バロウズ)が、物語が進むにしたがって、なごみキャラに変化してゆく展開の演出も悪くなかったように思った。
 裁判所判事役のドナルド・サザーランドの登場で、物語がコメディの雰囲気になって、シリアスさをやわらげていた。
Rolfe Kent, Kenny Wild, George Doering, Grant Geissman, Rolfe Kent, Mike Englander, Tom Rainier, Dan Higgins, Stefanie Naifeh
Reign Over Me [Orginal Motion Picture Soundtrack]
再会の街で
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