チーム・バチスタの栄光 | にゃ~・しねま・ぱらだいす

にゃ~・しねま・ぱらだいす

ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

チーム・バチスタの栄光 スペシャル版


【監督】中村義洋
【主演】竹内結子、阿部寛、吉川晃司、池内博之、佐野史郎、玉山鉄二、井川遥
【オフィシャルサイト】http://www.team-b.jp/index.html

自分もよく選書の手引きとしている『このミステリーがすごい!』で
高い評価を受けた原作を、主人公などの設定を変更して映画化。
原作者が現役医師ということもあり医学界の裏を暴く骨太な大作かと思いきや、さにあらず。
軽快なエンターテインメント作に仕上がっているが、もう一押し欲しかった。

東城大学医学部付属病院では、拡張型心筋症の治療法として心臓を一度停止させ、
左心室を切り取り再鼓動させるバチスタ手術専門のチームが話題となっていた。
アメリカ帰りの心臓外科医・桐生を中心とする7名は成功率60%といわれる難手術を26連勝。
その栄光と高名は内外に轟いていた。
しかし100%を誇っていた彼らが、3例立て続けに失敗。患者は術中死を遂げる。
リーダー・桐生は自ら病院長を通して内部調査を依頼する。

お鉢が回ってきたのは、患者の愚痴聞き役・不定愁訴外来の心療内科医・田口。
外科の知識のない彼女は、チーム全員への聞き取り調査を開始するが、
不審な原因は特定できずに事故死との判断を下す。

しかしそこに、その結論を覆すべく厚生労働省から刺客・白鳥が現れる。
横暴で勝手な白鳥の行動と言動に振り回されながらも、田口は不審な点に気付いていく-。

話題になっているミステリー小説は一通り目を通してみる自分だが、医療サスペンスは範疇外。
以前読んだモノが肌に合わずに断念した経緯もあり、ハードルを上げてしまっていたため
原作は未読。『白い巨棟』のようなドロドロした愛憎渦巻くハードストーリーと認識していたので、
全編軽快なタッチとテンポの良いリズムで描いていく展開は意外だった。

原作でうだつの上がらない中年男性だった主人公・田口は画面栄えを考えてか設定を変更。
ファンには賛否両論あるかもしれないが、ストーリーテラーとしての竹内結子のひょうひょうとした
存在は、生死を扱う題材と医療現場という生々しい舞台に明るさをもたらしているように思う。

安定感のあるメンバーの中で特に光ったのは、吉川晃司。
プールにバク転していたやんちゃ坊主もすっかり年齢を重ね落ち着いたオトナを好演。
周囲に天才と揶揄されながらも決して舞い上がることのない冷静沈着なエリート外科医を、
見事に演じきっている。往年の暴れっぷりを知っている者には隔世の感がアリアリ。

ハードな内容を時にはコミカルにリズムを変えて繋いでいく演出は安定感もあるが、
残念ながら犯人の動機が不明瞭なところで失速。原作通りの構成なのだろうが、
理解不能の事件が現実に多発する昨今だからこそ、せめてフィクションの世界では
納得できる理由を提示して欲しいと思う。
そうでなければ命が軽視されている今の世界があまりにも救われないような気がする。

映画としての評価は○。原作としては△というところか。

【評価】
★★★☆☆