パビリオン山椒魚 | にゃ~・しねま・ぱらだいす

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ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

パビリオン山椒魚 プレミアムエディション

【監督】冨永昌敬
【出演】オダギリジョー、香椎由宇、高田純次、麻生祐未
【オフィシャルサイト】http://www.pavillion.jp/

昨年末電撃結婚したオダギリジョーが、妻となる香椎由宇と出逢った作品。
…それだけ。

1867年のパリ万博にも出展された動物国宝オオサンショウウオのキンジローを庇護する
サラマンドル・キンジロー財団で、彼(?)の150回目の誕生日会が催されることになり、
自称『21世紀の天才レントゲン技師』飛鳥芳一は、第二農響の香川という謎の人物に
キンジローの奪取および撮影を要請される。
『ホンモノのキンジローには背骨に手術跡がある』ので確認したい、とのことだった。

財団の4女・あづきは反目し続けるお家騒動に嫌気がさし、実母を探しに出たいと考えていた。
父・四郎の要請もありキンジローを連れ出すことに成功した彼女は、忍び込んだ芳一の
レントゲン車に同乗し逃走。一目ぼれした芳一は共にあづきの母を探すたびに出る-。

『学生映画』という無敵のジャンルがある。
どんなに荒唐無稽支離滅裂前後不覚でも観客は何かのメッセージ性を読み取り絶賛してくれる。
演出や脚本の枠を越えて勝手に解釈し、納得してくれる。それは俺に才能があるから。
その勘違いが沢山の哀しみを産んだ。何人の映画作家の卵たちが多くの時間を棒に振ったか。
どれだけの人間が未だに底辺で燻り続けて夢という甘い誘惑で飢えをしのいでいるか。

この作品は正にそれ。
毒のある役者、曲者と呼ばれる俳優、珍味とも言える変わった素材…どれも『学生映画』の世界なら、
観衆が勝手にメッセージ性を汲み取ってくれるインターフェイスに満ちている。
だが、それだけ。映画として作品として、何も完成されていない。何かありそうでその実、何もない。

商業ベースでやることは学生映画とまったく対照的な位置にいる。
自分の作品にお金を払ってもらうことは趣味ではない。
それに値する代価がなければ、誰も好き好んでこの不景気に娯楽に金銭を差し出したりしない。

オダギリ・ジョーが出演していなければ誰一人見向きをされない作品かもしれない。
作品を選ぶことで知られる彼が出たことさえ疑問で、香椎由宇を狙ってオファーを受けた…のかな、
そう勘ぐってしまうぐらい彼のファンにさえお勧めできない駄作。

だが、何か青臭くて妙に懐かしかった。


【評価】☆☆☆☆☆