大注目の１作がいよいよ公開になりました。

初日の都内のスクリーンはほぼ満席だったので

地方へ回避。予想通り閉館が決まった”MOVIX

三郷”はガラガラで超集中での鑑賞です。

”アンダーザスキン・種の捕食”のジョナサン・

グレイザーが監督なので癖強の出来具合である事

は容易に想像出来ます。私の最大の関心事は今作

がアカデミー賞の音響賞を得たのでそのサウンド

デザインに興味津々で御座います！

既に判っている事はアウシュビッツの収容所脇

に建てられた所長の家を中心とし、収容所内の

惨劇は描かず、これに関わったナチスの人々の

生活を描いた内容だという事、所内の模様は

音を中心に漏れ聞こえる物や、遠景の向こう

に見える物に留めたという点です。

相当客観的に描く為にカメラは定点に置かれ、

役者には当時の人物に成り切って演じて貰う。

スタッフは別部屋で定点カメラの映像を

盗み見る様に収録具合をチェックしつつ、

役者の限界に挑むという相当に過酷な手法

で撮影を敢行しています。

当然ノーライトに隠しマイクで、現場に

スタッフの気配がほぼ無いので、役者の

役柄に対する没入感はとてつもない物が

あって精神的にかなり疲弊します。

映画が始まると、圧するような排気ダクト

からの音か？何かを延々と動作させている

低域の音が終始聞こえ、生活している環境

の家の中も外も同様のレベルでずーっと

蔓延っていますが正体は作品内で判ります。

度々聞こえる銃声に悲鳴と、なんだか

判らないけどそば耳を立てたくなるような

狂気な音が塀の向こうから漏れ聞こえて

来ますが、家族は慣れたのか？判って

いながら聞こえないフリをしているのか？

画面の中では恵まれた生活風景が延々

と続きます。

で、音の配置はセンタースピーカーから

しか出ません。もっと豊富にサラウンド

を使用するのか？と想定していましたが

全部センターに押し詰め込んで来てます。

これが息苦しさに拍車を掛けます（汗）

冒頭とエンドに流れる阿鼻叫喚な音楽は

サラウンドを豪快に使っていたので、

画面に一点集中させる為に相当に狙って

来ていると解釈して良さそうです。

家の中ばかりだと流石にきついので、所長

の異動に際して、ナチスの会議の場面など

外の模様なども都度都度登場してくるので

私は飽きませんでしたが

「なんじゃこりゃ？」

と思ってしまった人は猛烈に

眠いかもしれません（笑）

ジョナサン・グレイザーはたまたまこの

原作に出会い、アウシュビッツを舞台と

しましたが、世界の現状を鑑みると海を

隔てた我々も全く同様なんだと思います。

国内の景気や経済にばかり意識が行き、

一行に給与の上がらない自分の生活に

不平不満を零しますが、中東やウクライナ

の紛争は続き戦死者は続々と出ています。

それを問題と捉えるのか？一切耳目を

傾けずに生活するのか？と言われれば

圧倒的に後者でしょう。

見終えて思ったのは、戦争犯罪がどうの

こうのよりも、どうにもならないな、、、

が正直な所、この辺が実に頭が痛いです。

かなりチャレンジングな作品なので見る

人を相当に選ぶのは間違いないと思います。

気分の悪くな人も居れば、ずっと退屈な

思いをする人も居られるじゃないかな？

ただ言える事は、後で配信で視聴しても

音響面を正しく家で再生出来るか否か？

で見え方が相当に変わるのは間違いないので、

製作者意図を汲むのであれば劇場での

ご観覧をお薦めします。

問題作で有るのは間違いないです。

関心領域