かの有名な黒澤明監督”生きる”のリメイクを

英国を舞台に、”志村喬”の役をビル・ナイが

演じました。

頭の中に刷り込まれた黒澤版と比較しながら

の鑑賞となりますが、冒頭のロンドンの古い

実景描写からスムーズに50年代の色合いに

まとめ、構図を4：3のスタンダードサイズに

収めたのは見事な選択としか言いようが無いです。

一気に時代に落とし込まれました。

後はひたすらビル・ナイの抑えた芝居に

身を委ねるのみ。蚊の鳴く様な彼の小さな

声、細かな目配せ、無駄な動きを排して

最小限の動きで構図に中に埋まって行く

彼のお芝居はまさに職人芸、銀幕を食い入る

様に見入ってしまいます。小さな動作こそが

人の心を掻き分けて入って行く事を彼は

良く知っています。

小田切みきが演じた役はエイミー・ルー・ウッドが。

これも雰囲気を良くトレースしており、オリジナル

の研究が伺えます。

注目はこのブランコのシーン、どこに挿し込まれるか？

”ゴンドラの唄”に代わる物は何か？

答えは”ナナカマドの木”でした。

これも非常に良い唄でした。癌に罹患したビル・ナイ

は志村喬の様な悲壮な芝居にはせず、黒澤版では号泣

シーンの所、英国版はひたすら胸に染みます。

これはカズオ・イシグロが選曲したもので

スコットランド人の心の民謡の様です。

エンドの部分よりも、酔って酒場で思わず

歌い出したこのシーンは相当にグッときます。

やっぱりビル・ナイは上手いです！

日本人なら必見でいいでしょう。是非見てください。