オープニング・セレモニー


 オープニング・セレモニーと上映は、10月7日17時より前記したヨット競技場に仮設された屋外劇場で例年通り行われた。キム・ドンホ氏の実行委員長としての最後の映画祭ということで、例年よりも多くの韓国の映画人が参加している(クロージング・セレモニーは、さらなる盛り上がりを見せるといわれている)。わたしは午後2時ころ、会場前を通り過ぎたのだが、すでにレッド・カーペットの左右には女高生たちが場所取りをしていた。4時に再び会場に行くと、報道陣、来場者、会場を取り巻くファンでごったがえしていた。特に、今年はセレモニーのチケットの入手がひじょうに困難と言われている。会場内では、通常は来場しない、映画祭スポンサー関係と見受けられる高齢層の観客も多数占めていた。この間、メイン・ステージに続くレッド・カーペットを映画関係者、男女優が次々と登場し、その姿が、屋外巨大スクリーンに映される。俳優のアン・ソンギ、監督のイ・ジャンホ、イム・ゴンテクなど、韓国映画界の重鎮が続々と登場する一方、俳優は若手中心で、スーパースターは少ない。突然、大歓声が上がると、「アジョシ」に主演するウォンビンが登場した。しばらくして、また大歓声があがると、蒼井優、岡田将生、廣木隆一監督の「雷桜」チームが登場した。韓国の俳優たちは、レッド・カーペットを晴舞台のように颯爽と歩くが、多くの日本の俳優はどこかテレ臭そうに歩く。わたし個人的には、日本の俳優の仕種を好ましく感じる。開始時間をかなり押してキム・ドンホ委員長、オープニン作品「Under the Hawthorn Tree」のチャン・イーモウ監督、主演のシュー・トンウ、ツオ・シャオが登場した。そして最後に、審査委員長のワダエミさんが登場した。今回の映画祭では、ワダさんが衣装をてがけたジョン・ウーのプロデュース、共同監督の「Reign of Assassins」も上映される予定だ。レッド・カーペットは長びいたが、オープニングの挨拶は淡々と進み、オープニング作品はほぼ予定時間とおり始まった。


キネマ旬報映画総合研究所 所長のシネマレポート

オープニング・セレモニーのレッド・カーペット


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早くから来て場所取りする女高生たち


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”ウェル・カム・トゥー・ザ・ハブ・オブ・エイシアン・シネマ”が映画祭の気合をうかがわせる。

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審査委員長のワダ・エミさん


 「 Under the Hawthorn Tree 」は文化大革命を背景に、青年と父親が革命で囚われている家庭の少女のラブ・ストーリー。「初恋のきた道」、「あの子を探して」に通じる世界だが、文革へのぬるい視線などちょっと…・・・という

感じだが、もはや中国を代表する監督になったチャン・イーモウ監督に「紅いコーリャン」の心意気を期待するのは無理なのだろう。まあ、小品ではあるが、アジアを代表する監督の作品だけに、オープニングを飾るヴァリューは十分に備わっている。

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チャン・イーモウ監督と主演のふたり(写真提供・土田真樹 上/下)


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 上映が終わると、オープニング・パーティーが10時から開催される。例年と異なり、今年は通常は参加しない関係者が多数入場を希望していることから、招待状がメディア関係まで届かない。また、例年は、海に面したパラダイス・ホテルの広い屋外の庭が会場になるのだが、今年は、グランド・ホテルの宴会場が会場ということもあった。


 また、映画祭のメイン・ゲストのホテルが、昨年までのパラダイス・ホテルからグランド・ホテルに移動したことから、ほとんどのメイン・ゲストはグランド・ホテルに泊まっている。そこで、100人は超える日本からの女性韓国俳優ファンが、深夜までホテルのロビーに待機している。実は、わたしが乗ってきた飛行機にファン・グループが同乗しており、その真っ只中に座っていたのだが、交わされる会話からもれ聞こえる情報量にはただただ驚かされていたのだ。こういったファンが成田、関空からプサンに飛んでくる。映画祭がはじまったころには考えられなかったことで、映画祭が観光資源となっていることを証明している。


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ジャーナリストに混じってスターを追う日本のファンのみなさん