2009年の映画界を振り返って、デジタルとグローバリゼーションがこれからの映画産業のキーワードになると感じた。


まず3Dの導入でデジタル化が急速に進んだことがあげられる。2012年、テレビの地上波のデジタル化で、映像コンテンツは一気にデジタル化に向かうだろう。そこで、映画とデジタル・コンテンツの境界が曖昧になってくる。映画館では、フィルムで撮影され、フィルムで上映される従来型の映画は存続するだろうが、デジタルで撮影されたものを、わざわざコストをかけてフィルムで上映するかたちは減少するはずだ。既にデジタル・スクリーンでは、あらゆる形態のコンテンツが上映されている。さらに、ひとつの作品が2時間前後で定額料金という常識も崩れるかもしれない。製作者、権利者にとっては、デジタルによるコンテンツの出口が増えることで、映画館はひとつの手段となる。また、映画館も映画以外の上映の場となる。映画上映が誕生して110年強が過ぎ、今、映画環境の大変革を迎えている。また、大手とインディペンデントの2極化する中で、デジタル時代は、インディペンデントのチャンスといえる。フィルム時代の映画は少品種大量販売だったが、デジタル時代は、多品種少量販売で成立するからだ。韓国のドキュメンタリー「牛の鈴音」はわずか数百万円の制作費とデジタル上映で300万人以上の動員を記録した。企画次第で、可能性は大きく広がる。


 もう一つのグローバリゼーションについては、2009年11月22日、NHKで放送された『チャイナパワー“電影革命”の衝撃』をご覧になった方はよくわかるのではないか。この番組は、2009年5月上旬号のこの欄で紹介したピーター・チャン監督の「十月囲城(Bodyguards and Assassins)」の撮影現場を追いながら、世界の映画人が中国に向かっていることを伝えている。中国を中心に香港、韓国、台湾が急速に接近していることは、この欄で何度も触れてきた。


 このデジタルとグローバリゼーションに最も積極的なのがティ・ジョイである。新宿バルト9ではあらゆるデジタル・コンテンツが上映されていることは既に広く知られている。そのティ・ジョイが、韓国の最大手CJエンタテインメントと合弁会社を設立することを発表した。このコラボによって共同製作、共同宣伝展開、日韓同時公開などを目指すという。他にも、日本のカシオ・エンタテインメント、吉本興業、香港のサロンフィルムズによる3Dアニメの共同製作などが始まっている。海外との共同事業については、日本の大手は様子見的な姿勢が強い中で、ティ・ジョイが成功事例を作れば、後に続く会社も増えるのではないか。


(キネマ旬報 2010年 1上旬号)