本日4月3日は、有馬稲子の生誕92周年となります。
それを記念して彼女の作品を紹介します

 

『浪花の恋の物語』(1959東映)
監督 内田吐夢
撮影 坪井誠
共演 中村錦之助、花園ひろみ、日高澄子、進藤英太郎、田中絹代、片岡千恵蔵
   
【あらすじ】
飛脚の忠兵衛は知り合いに無理矢理連れ込まれた郭で、梅川という遊女と出会う。
その日から、忠兵衛は毎日にように梅川を訪ねるようになった。
そんな二人の様子を、近松門左衛門が隣室で見聞きしていた。
梅川の身請け話を聞いた忠兵衛は、あずかった武家の金を郭の主人に渡し、梅川を連れて出て行った。
二人は忠兵衛の父が住む田舎の村を目指すが、武家の金に手を出すのは犯罪であり、村の入り口で追っ手に捕まってしまう

 


有馬稲子の代表作です。

東映京都がかなり予算を投じた意欲作で、珍しい二階建てセットで撮影されています。
かの片岡千恵蔵や、田中絹代も出演しており、キャストも豪華です。

また、共演した中村錦之助と結婚したことでも話題になった作品です。
世間的には、歌舞伎役者との結婚が、有馬稲子の利発なイメージとは合わなかったようで、「サルトル片手にチャンバラスターと結婚」などと揶揄されたりもしたそうです。


この作品の素晴らしいシーンは、終盤に訪れます。

有馬稲子と中村錦之助の逃避行が、通常のセットでの演技から、急に歌舞伎の舞台での演技(舞)に変わるのです。
音楽も衣装も化粧も、歌舞伎のそれに一転します。
拍子木が鳴らされ、三味線と長唄(?)が流れます。

 

 





いったん、映画のセットへと戻ります。
そこでは、中村錦之助と離れ、遊郭に戻された有馬稲子は井戸へ飛び込もうとするが死ねません。
再び、歌舞伎/日本舞踊の漆黒の舞台に戻り、有馬稲子がひとしきり踊ります。
その素晴らしさには息を吞んでしまいます。

これが有馬稲子でしょうか。







それにしても、女が演じる歌舞伎というのは、かなり稀なことではないでしょうか。
(セリフ回しはなく、踊るだけなので、歌舞伎というよりも日本舞踊と呼ぶべきであれば、女が演じていてもおかしくはないのですが。)

それが、歌舞伎であろうと日本舞踊であろうと、ここでの有馬稲子の悲しみと狂気の表現は、見事です。

親しみのある彼女の丸顔と垂れた目が、近松の悲劇性を逆に引き立たせているかでしょうか。


さて、映画は驚くべきことに、続いて、文楽の世界へと変わります。
そこでは、有馬稲子はおらず、浄瑠璃の人形の女のしぐさが、実際の文楽の舞台で、人形遣いたちにより演じられます。

映画の豪華セットから、歌舞伎の舞台、そして文楽の舞台へと変わる、大胆さに、日本映画の最盛期の一つの達成点を見る思いがします。

筆者は、伝統芸能と現代の文化の融合には、常に警戒的なのですが、この展開は、凡百の「融合」を遥かに超えた、驚くべき映像体験を与えてくれます。

 




おそらく、有馬稲子が実は幼少時に母(初代有馬稲子)から踊りを習っていたことによる、踊りの巧みさが生きたからかもしれません。

また、監督の内田吐夢が、自らも女形の経験のある、類い稀な監督だったからかもしれません。

 





















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